2000.12.01 吉祥寺スターパインズカフェ

ラビは情感を込めるといった歌い方はしない。時にはシャウトすることもある が、演歌歌手に代表されるような決して歌い上げるといった類のストレスのつけ かたではない。ことさらそれを意識したのは、4曲目にビアノの弾き語りをバッ クに歌われた「ひらひら」に何か居心地の悪いものを感じたからだ。なるほどこ の曲は、しっとりと聴かせるにはぴったりな曲調だが、淡々としているラビの歌 は、スローバラードが喚起してやまない感傷とか感情の昂揚からはかなり遠く、 それが違和感を抱かせた原因だと思い当たった。(そういう意味では、2曲目に 演奏した「その気になってるわ」でも、珍しく声が細くなり、感極まったように 見えた部分があったが、私は風邪のせいと解釈した。)

いきなりそんなことをいろいろ考えさせられる今回のステージであったが、風 邪をひいて(自ら用意していたティッシュの箱は使っていないようだったが)し まったとのことで、前半は声の調子が良いとは言えず、ラビのギターとバックが あわなかったりした部分もあった。しかし曲が進むにつれ普段のラビに戻り、何 度かライブを重ねたラビ組は6月に見た時よりも個々の楽器が際立つというより 一つのアンサンブルとして完成度が高かった。とりわけ「ダウンダウン」から 「ノスタルジィ」までの5曲は、やりなれているせいか、これぞラビ組ともいう べき充実した演奏ぶりだった。(今回アレンジにジャズ風味が増していたのは印 象的だった。)

また今回忘れてはならないのは、『なかのあなた』(『もうすぐ』とともにCD 化を切望します!)からの曲が3曲も演奏されたこと。このアルバムは陣太鼓とい うバンドと録音されたように、重厚なバンドサウンドが特徴だが、その中でも特 に弾き語りには向きそうもない3曲が演奏されたのはラビ組がバンドとしてまと まってきたことの自信の現われか。(曲に先立つMCで「このアルバムでファンが 離れた」とか「今日またこの曲をやると客が再び離れていくかもしれない」と言 っていたのはおかしかった。)

譜面台を立てて臨んだライブレコーディングもこの日限りではないようで、来 年もいくつかのステージを録音して、ベストテイクを出すとのこと。リリースは かなり先になりそうだが、次回はリクエストを募って演奏する曲を決めるってい うのはどうでしょうか。

メンバー : ギター 加藤博之、ベース 小川ヒロ、ピアノ 高橋誠一、シンセ+ア コーディオン 森英治、パーカッション 山口とも

1.眠れない夜 2.その気になってるわ3.むしあつい日の午後 4.ひらひら 5.橋が 燃える 6.昔の知恵は今滅びてく 7.あてのない一日 8.ダウンダウン 9. 困った 女10.スローモーション 11.銀と白12.ノスタルジィ 13.立つ 14.よぶ 15.夢のド ライブ 16.グッバイ上海 // E1.ドアをあけて E2.いいくらし


松沢明彦. 2000.12.12 投稿

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