2002.01.26 吉祥寺スターパインズカフェ

久しぶりのラビ組。この日の流れは美空ひばりの「真赤な太陽」をはさんで、前 半と後半にはっきり分かれていた。冒頭の「風よ」(この曲をライブで聴きたい という願いがやっと成就しました。)に続く、「なかのあなた」からの三連発 は、まさに客席を凍りつかせるといった表現が大げさでないくらい張り詰めた雰 囲気をもたらしていた。その空気は次の昨年後半の弾き語りライブで披露された 軽快感の薄れたアレンジのコーヒータイムでも変わることがなく、つづくキーボ ートの伴奏に合わせて静かに言葉をかみしめるように歌われた「海の予感」で緊 張は頂点に達した。この曲はラビのファルセットの美しさにうっとりしてしまっ た。あとで『SUKI』に収録されているものを聴き直してみると、基本的なアレン ジは大きく変わっていなかったと思うが、アルバムでは地声で歌っている部分が 多いのに比べ、高い声で歌われたこの日の演奏はより情感をまして、聴かせる曲 になっていたと思う。次の「MUZAN」も前回の弾き語りと同じ歌詞、アレンジを 変えたバージョン。バンドアレンジもとてもスムーズにいっており、是非ライブ 盤に入れて欲しい曲。

前半最後の「真赤な太陽」で場の緊張は序々に緩和され、お馴染みのステージ衣 装に着替えて来たラビは、ストレートなロックンロールを立て続けに演奏した。 ラビ組はパーカッションの山口ともを始め、高等技術を駆使するミュージシャン が多いためか、素直に8ビートのロックという風にはいかないが、この日は高橋 誠一の生ピアノの音がバンドの核の音となり、ロックバンドとして色を強めてい たように思った。そしてこの後半の演奏は、私がもっとも良く見ていた80年代前 半のラビ、12インチレコードを出した頃の演奏(そういえば「ガンマンのブルー ス」「そんな時最高」は同レコードに収録されていた)を彷彿させるものだっ た。

今回珍しく2曲も他人の曲を演奏したが、なかなか新鮮でよかった。とりわけ美 空ひばりは完全にラビの歌になっていた。(だれかラビが歌う昭和歌謡アルバ ム、企画しないかな。) もうひとつ書いておくべきことは、エレキギター。いつもの生ギター以外に、テ レキャスターを弾いていた。少し前まで練習中、なんていっていたがなかなか堂 に入って格好良かった。

演奏曲目
1.風よ 2.色さめて 3.立つ 4.橋が燃える 5.コーヒータイム 6.海の予感  7.MUZAN 8.真赤な太陽 9.ガンマンのブルース 10.エントツと煙 11.困った女  12.あてのない一日 13.裸の街 14.夢のドライブ 15.そんな時、最高 16.グッバ イ上海 // EN1.川にそって EN2いいくらし


松沢明彦. 2002.03.15 投稿

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