私ってこんな

ファーストアルバム「私ってこんな」のジャケットは、ラビがどんな顔なのかわからない。全体に暗いが特に顔のあたりがよくわからないような撮り方になっている。ライナーとオビにまっすぐな長い髪を真ん中でわけた写真が載っているが、あとはやはり顔がよくわからない写りだ。ミュージシャンが細野晴臣など豪華なわりに内容がもひとつはっきりしないのだが、なんか関係ありそうな気がする。

バックは、はっぴいえんどの細野晴臣がベース、乱魔堂の洪栄龍がギター、フォー・ジョー・ハーフの林立夫がドラムス、A-4には岡林信康がハーモニカで参加している。なお細野と林は翌年、鈴木茂、松任谷正隆とキャラメルママを結成し、吉田美奈子の1stアルバム「扉の冬」(1973. 細野プロデュース)でバックを担当することになる。

ぼくが注目しているのは、B-1, B-3 のような社会的な違和感をうたったものが入っていることだ。 B-3 では自分を、関東大震災の時に '13円50銭' とうまく濁音が発音できなければ虐殺された(ライナーには「暴行」と表現されているが)朝鮮人になぞらえるほど、その違和感は激しい。そしてラビは実際にその濁音を抜かして発音している。ひょっとしてCD化されていない理由はそれ? このモチーフは次作「ひらひら」の B-3「夢のドライブ」に少し出てくる以外、ないように思う。初期の特徴ということだろうか。

しかし、「帰りたくない」と並ぶレコードデビュー前の代表作らしい B-5 では、「帰りたくない」のようなディラン節ではない、ラビのオリジナルな作風ががすでに完成している。未完成ながらやはり重要なアルバムには違いない。

ちなみに上述のジャケット、裏返してよーっく見るとラビの大きなポートレイトがぼんやり浮かんで見える。 こちらは吉田美奈子の「扉の冬」の表ジャケットと似ているといえなくもない。

99.9 やっとCD化された。オビに「発禁ソング収録」とか書いてあるが、どの曲をさしているのか解説が全くない。


(1997.11.25. 最終修正 99.9.30)

中山 貴弘

レビューページに戻る