1999.5.01 立川 地球屋

一曲目はファーストアルバムから「エントツとけむり」。前回のライブが「眠れない夜」からはじまったらしいのと比べると軽快なでだした。

ぼくがラビを知ったのはほんの2年前。活動を停止してから10年ほど経っていた。レコードを集めるうちにむかしのファンと知り合い、ラジオやライブの海賊録音でラビの話す声を聞いた。とてもやさしい話し方だと思った。 今年2月ホームページを立ち上げたのを口実に、「ほんやら洞」におしかけて、店主であるラビさんに直接会い話を聞いた。 順序が逆である。

だからこの日までぼくの知っている中山ラビは、レコードとラジオ、それから引退して10年以上も経って、喫茶店のオーナー然としたラビだった。93年のガロのインタビューでは、歌手だった頃の重荷をすっかり降ろして普通の人になったラビの談話と写真を見ることができる。それからさらに5年、髪をおかっぱ・スパイラルパーマの金髪にし、黒いカーデガンの下に黒のキャミソール、黒のホットパンツ、黒のひざ上ソックスという姿のラビにはアッと驚いたが、また違う段階に入ったということではないだろうか。 いま、生まれて初めて見る歌手・中山ラビは、とても気持ちよさそうにファーストアルバムからの曲を歌っている。

子供が生まれてから歌うことを一切やめたといううわさだったたが、プライベートな場所では歌うこともあったそうだ。しかし前回にひき続き萩原信義、太田恵資という優れたミュージシャンをバックに従えた約2時間の今回のライブは、これから本格的な活動再開を期待させるものだった。

ラビの声からはブランクがあったことがほとんど感じられない。 ぼくがこういうのはおかしなことなのだが、ライブを聞きながら不思議なことに、まるで昔のラビを思い出すような感覚に浸っていた。

曲目は前回のものに加えて、ファーストから「エントツとけむり」、「昔の知恵は〜」(「ディランが好きだった頃の曲」とのMCあり)の2曲、「女です」から「あてのない一日」「その気になってるわ」、ぼくが好きなアルバム「もうすぐ」から新たに「あんた」。「なかのあなた」以外全てのアルバムから歌ったことになる。
そしてアンコールは前回同様の「さわれますか」に加え、代表作といえるアルバム「ひらひら」から、客席と合唱になった「ドアをあけて」と、多分ほんやら洞の常連客からリクエストの多かったらしい「ひらひら」。

せまい店内のおかげで、ライブ終了後ラビさんが顔見知りの客と話すのを聞くことができた。 むかし「ネクラ歌手ベスト10」みたいのに取り上げられたりしたことがあったそうだが、ご本人いまでもそれを結構気にしている様子。「ごめんね、くらい曲ばかりで」などと言っていた。まあでも「ネクラ」も既に死語だし、どうみても今のラビさん本人は昔の印象と比べると明るすぎるくらいだし、我が道を行き続けてほしいと思う。 欲を言うと、今度はもっと広い場所でやってほしい。


この日の演奏メンバー:中山ラビ Vo. G、萩原信義 G、石井K介 Key、太田恵資 Vl、丸山英秋 Perc.

(1999.5.11. 99.5.12 一部修正)

中山 貴弘

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