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「私ってこんな」から「はだ絵」まで

ラビ/もうすぐ

 全曲ラビの弾き語りである.ラビのライブの魅力を知っている人には待望の アルバムだったかもしれない.が,残念ながらライブとレコードとは両立しな かったようで,出来は余り良くない.ラビ独特の乗りが十分に発揮されている とは言い難いし,かと言って音的にラビのギター1本ではきつい.録音状態も 含めてやや安易な作りという気がする.「あんた」やテープにのみ入っている 「あの子」は,ライブでは陣太鼓のバックを付けてやっていたのだから,無理 に弾き語りにする必要があったのかどうか.

 もっとも各曲は好きなのが多く,けっこう気に入っているのだが.あったか い感じのする「1年が終わる」や「帰りたくて」,いかにもラビらしい「そも そも」,その中間の「ひとりっこ」「アフリカへ」,ラビ独特の言葉の面白さ を持つ「いいじゃないか」と「アワレこの世に・・・・」,そして「念仏ぐらし」 と「二十才になっても」の重たい魅力.結局全曲気になるわけで,それだけに もう少し出来が良かったらという気がする.

 ジャケットは太田恵介氏の手による絵葉書風というか日本調のしっとりした 感じで,素晴らしい.

ラビ/なかのあなた

 前作と半年余りという,ラビにしては短い間隔をおいて出されたこのアルバ ムは,うって変わって当時のラビのバックグループであった陣太鼓のやや古い (?)ロックをバックに唄われている.

 前作『もうすぐ』はそのころのライブの第1部,『なかのあなた』は第2部 に当たるわけだけれど,前作と同じような問題がある。自分のバック・バンド でグループとして録音したいというのは,ミュージシャンとしては自然な気持 ちかもしれないが,実際問題としてはなかなか難しい.レコーディングはライ ブと違い技術的にかなり高いものを持っていないと出来ないわけだけれど,陣 太鼓はとうていそこまで達していなかったし,それを補う工夫も余りされてい ないから,アルバムの完成度としてはきわめて不十分である.「橋が燃える」 などはレコードに入れるには,もう少し別の形があったんじゃないかという気 がする.

 逆にあか抜けしない良さという印象もないことはなく,けっこう好きな部分 もある.「夢うる人」と「呼ぶ」は大好きな曲だし,「どうしますか」の感じ も好き.「さわる」と「であい」はもっとポップさを出せるバックだと,より 良くなったのにと思う.でも何より目立つのはジャケット・デザインで,大塚 努さんのクリア過ぎる位のラビのポートレートには,じっと見入ってしまった ものだった.4枚目,5枚目ともジャケットはさすがラビという感じだが,内 容の方は2枚を1枚に凝縮すべきであったというのが,偽らざる私の感想であ る.

はだ絵

 最近聞いた話では,このアルバムの売れ行きは極めて良くなかったというこ とだ.前作発表後しばらくして,活動を一時休止し再開後は地味な活動だった ためか,あるいはブーム(?)が去ったためか・・・・.僕もライブを見ていて出来 具合を心配していたものだけど,ほっとしたと言うか意外に気に入ってしまっ た.

 “ビューティフルに作った”がキャッチフレーズだったと思うが,瀬尾一三 をアレンジャーに,多数のスタジオ・ミュージシャンを起用し,まとまったき れいな音に仕上がっている.ラビのアルバムの中で一番レコードらしいと言え るかもしれない.残念ながらステージやかつてのレコードのある部分に感じら れた,ガーンと鋭く突き刺さってくるものはないが.というよりも,むしろそ うした部分を押さえて,別のものを目指していたと言うべきだろう.試みとし ては,それなりに成功していると思う.

 B面は全体にラビらしい感じで,言い回しの面白い「そのままのまま」や 「プリ・プリ・プララ」,意外な所も含んだ「半分だけ」,「風よ」はライブ で弾き語りで聞いていた時には,ちょっと歌謡曲ぽいと思っていたが,独特の 重いロックに仕上がっていて出来はよい.ユーモアのある「だから私は」と共 に代表曲だろう.A面は新しい試みと言えるが,トップの「何年ぶりかで」は たまらなく好きな曲である.ジャケットデザインは何となく分からない所があ るが,悪くはない. [了]

@T.K.生 HGD03700@nifty.ne.jp

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