2000.3.29 心斎橋BIG CAT

開演前のBGMにずっとトム・ウェイツがかかっていた。ビートルズの「It's all too much」やヴェルヴェッツの「シスター・レイ」をかけていた前回と比べるとなんとな くリキが入っていない気がしたのだが、それは間違っていた。ステージに登場したと きの中川のはしゃぎぶりはいつも以上。ヒデ坊がチンドンを構え、いきなり「エエジ ャナイカ」から始まった。

今回のツアータイトル「Survivor's Banquet」にはいろいろな意味がありそうだが、 江戸アケミやどんとの死をのりこえ、メジャー解雇をのりこえ、そして多分なにより メンバーの脱退をのりこえてきた者たち、ということだろうか。中川が「生き残った ものたちを紹介します」とメンバー紹介。テンション高し。中川の誕生日ということ でファンがステージに花束を置いたり、公式BBSの方で結成された河村のファンクラ ブが「三重河村会」なるのぼりを立てていたり、客席もまたテンション高し。

ファンクラブ効果かどうか、ベーシストとしての河村の活躍ぶりにめざましいものが あった。河村会の盛り上がりをややうらやましがっているらしき奥野は、黒ジャケッ トで首に水玉の長いストールを結び、ニューエスト時代をほうふつとさせるファッシ ョンなのだが、ちょっと元気がないのが気になった。MCほとんどなしというのもライ ブではいつも奥野タイムを楽しみにしているぼくとしてはつまらない。ヒデ坊はブズ ーキを導入。中川がアコギを弾く曲もあったが、ユニオンのライブでは初めて見た気 がする。

中盤には中川・伊丹抜きで、奥野作曲によるサントラ曲が演奏された。今年公開予定 の映画「アンチェイン」のサントラが、なんとソウル・フラワー・ユニオンだという 。監督がソウルフラワーのファンなのだそうだ。アンチェイン梶というボクサーが主 人公らしいのだが(終演後その人らしき人物をロビーで見かけた)、ヒデ坊がMCで映 画タイトルを「ボクサー」と告知し、他のメンバーが大笑いしていた。サントラは、 この日演奏されたどんと追悼の「トンネル抜けて」やカーティス・メイフィールドの 「ピープル・ゲット・レディ」の他に、レイ・チャールズの「アンチェイン・マイ・ ハート」などのカバー曲を含むらしい。メジャーでのリリースを希望する。

新曲「夏到来」(客席から「早!」とのつっこみあり)、カバー曲、サントラ曲と、 この日の曲目はかなり多様だったのだが、中でもしゃりすけ名義の曲である「短距離 走者の孤独」が演奏されたのには驚いた。ユニオンのライブで聞くと改めて、ブリテ ィッシュ・ロックのエッセンスをちりばめた緻密な展開の曲であることが分かった。 これからもとりあげてほしい。

全般に短めのナンバーで構成されていて好感が持てるライブだった。ただ、終わって みると疑問もあった。本編が「海行かば」で終わった後、アンコール2回。「嵐から の隠れ家」と「こたつ内紛争」。しかし続きを求める声はやまず、誰も帰ろうとはし なかった。結局客席の熱気もむなしくお開きとなったのだが、こういうことは構成次 第で防げたはずで、なんならアンコールはなくてもよかったのだと思う。2 度のアン コールがかえって不完全燃焼気味な印象を与えてしまった。

2000.4.5 中山貴弘

魂花レビュー