2000.12.14 ビッグキャット

「Go Go フーテンガール」からシンプルでストレートな曲目が続くオープニング。これまで自分の中にどこか、ライブではなじみの曲を聴きたいという気持ちもあったのだが、バンドの勢いにそんな気分もふっとび、もうこのまま新曲中心で押し通してほしいという感じになってきた。奥野がMCで「きょうは廃人になるまでやる気」とか言ったのは、結構本気だったのかもしれない。そういえば中盤のMCタイムで、「サニーデイもブランキーもスライダースも解散したし、これからは俺の時代や」と中川が発言していたが、その辺の路線を意識しているのだろうか。

ライブ直前に出た魂花時報に、大熊がしばらくソウルフラワーから離れると書かれていた。そしてドラムスに朴保&切狂言のコーキが参加して五人編成でのステージとなった。ドラムスとベースの骨組みにギターが鳴っているというのがロックのフォーマットであるとすれば、ぼくがこの数年間聴いてきたユニオンはよくも悪くも決してそういうものではなかったと思う。コーキのドラミングは力強く、今のロックンロール的曲目にはぴったりな演奏で、従来の曲にも新しい表情を与えていた。ドラムスとベースを核に、二本のギターとキーボードを乗せたロックバンドとしての、これからのユニオンを想像するのは楽しい。

ヒデ坊のボーカルマイクがいつになくオンになっていたこともあげておきたい。「龍宮」ではイントロの間、中川がメンバーを順におどけた調子で紹介していったが、ヒデ坊の番になると「大阪一のブルースシンガー。うたは心です」などと笑わせ、ヒデ坊もそれに応えるかのように開き直った歌い方が印象的だった。

いつも同じ構成でマンネリ気味と感じていたのだが、「もののけと遊ぶ庭」を本編半ばに持ってきつつも、「エエジャナイカ」「海行かば」で終わりというおなじみのパターンは今回も崩れなかった。アンコールは石原都知事を皮肉った「NOと言える男」と、前回に続き「踊ろよベイビー」。さらに再登場して「魚ごっこ」。8月にひきつづいて、附録的なアンコールとなった。

なお、本編で演奏された「荒れ地にて」はボ・ガンボスの「あこがれの地へ」の続編ということで、「スヌーザー」誌で「あこがれの地へ」について中川が語っていたのを覚えている。しかし、これと「魚ごっこ」を聴いていて、どうもソウルフラワーにニューオーリンズ・スタイルは似合わないな、などと思った。ボ・ガンボスが好きで、今年初めどんと急逝のニュースを聞いたとき、友達でも知り合いでもないのに泣けてしょうがなかった。だからこそ言うのだが、カバーや続編ではなくてソウルフラワーのオリジナル・スタイルそのものがボ・ガンボスへの、あるいはどんとへの、一番のリスペクトになるのではないだろうか。ソウル・フラワー・ユニオンはそれができる数少ないバンドのひとつに違いない。

2000.12.23 中山貴弘

魂花レビュー