2001.11.26 大阪バナナホール
ヒートウェイヴの山口洋(G)、渡辺圭一(B)、ソウルフラワーの中川(G)、KOKI(Dr)による新バンド「ヤポネシアン・ボールズ・ファウンデーション」のツアー。
「アラバマソング」(David Johansenのバージョンだそう)のSEにのってメンバー達が登場し、ニューエストでカバーしたことのある
"We're Gonna Have a Real Good Time Together" からはじまった。これは本編の終わりにも演奏されて、タイトルからしてこのライブのテーマ曲なのだろう。
ライブの構成は山口(ヒートウェイヴ)の曲と中川(しゃりすけ、ニューエスト、カバーが中心)の曲が交互に演奏されるというもの。山口と渡辺がバックをつとめる過去のソウルフラワーナンバーはそれぞれに面白いが、やはりバンドのオリジナルが聴きたいところだった。
それにしても中川がものすごくリラックスしていて、バンドを楽しんでいる感じがよく伝わってきた。ユニオンの時はボーカルにMCに彼一人でフロントに立っているようなところがあるので、山口・渡辺と三人で誰からともなく客席に話しかける雰囲気は見ていても楽しかった。
このライブでなにより面白かったのは中川と山口の対比だ。バンドの姿勢もファン層も重なるように思えるSFUとHWだが、こうして並ぶと非常に対照であった。
ギターやボーカルの音でいうと、骨太な山口と比べて中川は線が細く、女性的とも言える印象があった。ボヘミアン詩人風な山口に対して、中川はポップなメロディーメーカーというところか。
そしてアンコールの最後、中川/山口の共作である「満月の夕」を二人それぞれの歌詞で交互にボーカルをとったとき、二人の対照はとてもはっきりと現れた。
山口は阪神大震災の被災地で自分の感じた悲しみや怒りをストレートに歌っている。一方の中川は彼自身の心象風景ではあるにしろ、ある種客観的に被災地を描写していく。いわば山口が俳優で中川はナレーターというおもむきだ。そしてそのナレーションは洋モノの演劇ではなくて、浄瑠璃や歌舞伎の「語り」を思わせる。
中川の歌手・作曲家としての本質には、フォーク/ロックのシンガーソングライターというよりは、むしろ伝統的な芸人に近いものがあるのではないだろうか。ソウルフラワーの持つどこか普通のロックではない感じ、そして民謡の研究から震災を経てすんなりと民衆音楽の核をつかんでしまったことは、こうした彼の資質によるものなのだと思った。
来年にはこのメンバーでレコーディングも行う予定だという。アルバムではどういう対比、あるいは融合を見せてくれるだろうか。
魂花レビュー