2005.12.03 SITE KOBE ソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン

神戸、新長田の大正筋商店街というとても意外な場所にそのライブハウスはあった。そしてライブハウスがあるはずのビルに入っても全然そういう感じじゃなくて、ほんとにここか?と心配になってしまうようなところだった。

会場に入ると椅子がびっしり・きっちりと並べられていて、閉塞感をおぼえる。しかし客は超満員というわけではない。BGMにかかっているアラブ歌謡か何かがこれまた場末感を演出している。というような、なかなかにやりにくい状況でメンバー達が登場。

いつも楽しみにしている開演のSEは、西条ロック「三つで五百円」という強烈な曲。「幻の名盤解放歌集」に入っている流しのギター弾きの歌で、選曲した人のやけくそ感がにじんでいる(ような気がした)。出てきた中川がしばらく首を傾けて「もうちょい聴かせて」とかなんとか、結構長い間かけていたのが可笑しかった。

そういう、やや不安を覚える状況だったのだけど、オープニングの「リキサからの贈り物」がはじまると、アコースティックということで予想していた音の薄さなどは全然感じさせない演奏に感動する。バンドの名義は「ユニオン」ではないが、ライブの内容はソウル・フラワー・ユニオンだったと思う。その点、ソウルシャリストなり、ヤポネシアンなり(他にソウルフラワー1/2というのもあった)といった別ユニットのライブに「ユニオン」を感じられないのと対照的だった。

MCでも説明があったけど、地方をユニオンでまわるのは財政的にきついらしいので、こういう身軽な形態であちこちまわったのは大正解だったのではないか。神戸の前の金沢「もっきりや」は店も客もよくて、ビールの差し入れ入りで相当もりあがったらしい。最終日の東京はソールドアウトだったらしい。逆にいつでもユニオンが見られるという安心感のせいか、関西の盛り上がり方がちょっと低調な感じがする。

といって、なかなかに寂しいSITE KOBEでのライブもぼくは楽しめた。音がよく聴けたので。そう、今回のライブはぼくにとってこれにつきます。PA機器か何かの不調で、いくつかの曲で雑音が入って興ざめになってしまったのだけど、それは不可抗力、全体としてとてもいい音で彼らの演奏をゆっくりと鑑賞することができた。

特に感激したのは奥野のアコーディオン。モノノケ以外では弾かない楽器だがモノノケではあまりいい音で聴いたことがないので、あらためて奥野のリリカルな面を知りました。「ラグランロード」「夜に感謝を」、よかった。

各メンバーが歌った曲は、奥野「クライ・ベイビー・クライ」JIGEN「泣いてたまるか」佐藤けんじ (TEX & the Sun Flower Seed) 「魚ごっこ」というもので、それぞれにうまかったです。奥野、こないだのユニオンでこの曲を披露した時は「ちょっと。。。」という感じだったけど、今回のツアーでうまくなったみたいです。でも別の曲でコーラスを担当した時、奥野のコーラスが入るたび中川が「あれ〜?」と声を出していたのは失礼ながら笑ってしまったな。普段奥野のコーラスはあまり聞こえないから中川としても(客同様)異和感があったのでしょうか。

演奏曲全体として、「アコースティック」をうたいながらもアコースティック的なアレンジが逆にあまりなかった中で、「レプンカムイ」のアレンジは素晴らしかった。ファンからの要望が多い曲ながら、最近のユニオンにあってないらしくて、せっかくこないだ取り上げられたけどあまりウケなかったという名曲、このたびのアコースティック版にぴったりだったようです。原曲のもつアイリッシュな側面が浮かび上がってきて、新たな魅力を発見した。

そういう曲は他にもありそうで、やはり今のユニオン向けでないらしいが人気のある「宇宙フーテンスイング」なんて、この形態で取り上げてみたら意外とかっこよかったかもなあと思うんだけど、どうだろう。またこのユニットであちこち回ってほしいですね。

(2005.12.07)

魂花レビュー