この日のプログラムは、第1部(13:30-14:30):映画「月はどっちに出ている」上演と監督の崔洋一氏講演、第2部(17:00-19:00):ソウフルラワー・モノノケサミットwith趙博。
メンバー7人+おなじみのフィドルの光介さんとトロンボーンの大原裕さん(サイツ)にゲストの趙博さん、計10人の大所帯演奏となった。曲目は『天然の美』から『さよなら港』までだいたいいつもどおり、アンコールがとびだして『道頓堀行進曲』、聴衆がよろこぶので中川「もう一曲いこか」と『トゥルルンテン』。ほとんど二時間近いステージとなった。
メンバーは秋冬モードに入り、ゆかたではなく洋服だった。「モノノケサミットにあわせて作務衣を着てきた」という趙博さんが怒っていた(笑)。また聴衆が若いこととニューアルバムの発売を意識してか、メンバー全員ロックモードでもあった。美容院に行ったばかり、みたいな感じだ。ヨーコの派手なサングラス、ヒデ坊の光る青パン、河村は髪をおろしていた。ロックスターの復活、でしょうか。
中川、「みんな浪人、ということで。俺なんかよくわかってないから変なこというかもしれへんけど」といいつつ一曲一曲ていねいな曲解説が入る。「みんな勉強ばっかりしてるから分からへんかも知れへんけど、いまこういうのが東京では流行っててねえ」(笑)。
奥野のMCも入る。モノノケで彼のMCを聞くのはぼくははじめて。「ぼくも予備校時代は河合塾とか行って、京大に受かったんやけど」(・・・あいかわらず、この人は・・・)
DJ番組の紹介などするが、すかさず中川がわりこみ「まあみんないっぱいリクエストハカギとか送ったってな。面白かったら面白い、しょうもなかったら、しょうもないゆうて書いて。ね、しょうもなかったら、しょうもない」しつこく「しょうもない」を繰り返す中川(笑)。
コリア映画祭との関係か、8月の北朝鮮ライブのことが話題になる。
『インターナショナル』を始めると聴衆がみんな「気をつけ」をして聞くのだそうで、「こんな変な演奏でも?」と誰かが聞いたら向こうの若者が「いえ、内容が同じならいいんです」と答えたとか(爆笑)。いやー、彼らは「あーインターナショナル、の祭りだよん」とか「チャンゴを打ち鳴らせ、チンドンはひびく」などと歌っているのだが・・・。
髪の長い男とか髪の赤い女とか、北朝鮮の人達にはほとんど「生まれてはじめて見た」状態だったそうで、中川が「この国には髪をのばした男はいないのか」と質問すると「いや、昔はいました」「むかしていつ頃」「高句麗のころです」という漫才もあったとか、ヒデ坊がおばちゃん達に赤い髪の毛をひっぱられたとか(しかしこれに似た光景を私は五番町で見た。光介氏がオフステージでぶらぶら歩いているとたちまちおばちゃん達にとりかこまれ「あれー、可愛いらしよー、兄ちゃん」などとつけ毛をひっぱられていた)。北朝鮮の話題はつきないようだった。
そんなこんなのカルチャーギャップにも関わらず、彼らの北朝鮮ツアーは「人間がおるというあたりまえのことがわかった」旅行だったのだそうだ。
演奏自体は特にいつもと変わりなかった。というと誤解されるかもしれない。『アジール・チンドン』の録音された頃からは数段進歩した、かつリラックスできる演奏がこの日も繰り広げられた。何度聞いても彼らのチンドンにはうきうきしてしまう。また今回は照明装置なども結構使われており、(「ロック」コンサートなら普通なのだがモノノケでは)目新しかった。
ひとつ不満をあげると、第一部に出席した、多分たくさんいたと思われる年配の在日コリアンの人々の姿がライブで見られなかったことだ。会場が河合塾の地下食堂で少し狭く、そこに300人を越えると思われる人々が入ったので、身動き取れない状態になってしまった。 それで主催者側から「オールスタンディングのコンサートに慣れていらっしゃらない方々は一階にハイビジョンのモニターがありますから、そちらでどうぞ」というアナウンスがあり、その通りにした人もいたのかもしれない。けど「いつか、子供もお年寄りも来てくれるライブにしたい」(1996.1.19 朝日新聞夕刊)という中川の発言があることを考えると、こうした同じ様な年齢層だけの場にモノノケサミットとしてでてくるのは、ぼくにはおもしろくない。もちろん、聴衆は予備校生ばかりではなかったのだが。
付録。この日演奏された曲をたまたま記録とりました。モノノケサミットで最近演奏される曲はだいたいこのようなものなので、参考までにあげておきます。1996.9.30
- 天然の美
- ハイカラソング
- カチューシャの唄
- 聞け万国の労働者
- デモクラシー節
- トラジ
- アリラン(ボーカルは趙博と中川交互)
- 安里屋ユンタ
- 貝殻節〜アランペニ
- 満月の夕
- がんばろう
- 竹田の子守唄
- 橋(趙博のオリジナル)
- 復興節
- 東京節
- さよなら港
- 道頓堀行進曲
- トゥルルンテン