ONE KOREA FESTIVAL 12TH ワン・コリア・フェスティバル 12th 1996

ワンコリアフェスティバルに行った。前日は雨で寒かったので、今日も雨だったらどうしようかと思って居たが、とても良い天気だった。駅を出て歩いていくと本当に暖かくて、「あったかいねー。ひょっとして暑いくらいかもねー」と言っていたら、突然前から奥野さんが歩いてきたのでびっくりしてしまった。でも人目につかないよう下を向いて歩く奥野さんを見ると、やっぱり声をかけたりされるのは嫌なのかも、と思っているうちにすれ違うことに。なんかこっちは奥野さんの事を良く知っているような気になっているけどほんとは全然知らない同士なんだし、向こうの立場になってみれば嫌だよなあと思うのであった。

プログラムは韓国舞踊から始まり、スージー・キム、J・公山と続く。スージー・キムは米国エール大学音楽科卒、かたやJ・公山はNY、アポロシアターのアマチュアナイト優勝という実力派のお二人。J・公山氏は十四人あまりのコーラスグループを従え、のけぞりながら絶唱する迫力のステージを繰り広げた。その姿はJ・B(ジェームズ・ブラウン)を思わせ、彼には是非ともJ・Bの『プリーズ・プリーズ・プリーズ』を歌って欲しい。その場合倒れたときにかけるマントは韓国・朝鮮両国の旗だったらばっちりだと勝手な想像をした。(こんな事は不謹慎か)

この日すばらしかったのはチャンゴ(杖鼓)ソロ奏者の閔栄治であった。初めてワンコリアフェスティバルに出たのは14歳だったという。今はソウルに滞在し演奏活動を続けているそうだ。「僕が在日だというと皆驚くんですよねー。」そう語る彼の演奏は息を止めて聞き入ってしまうほど迫力のあるものだった。そう感じたのは私だけではないようで、熱気のこもった拍手に会場は包まれた。

お目当てのソウルフラワーモノノケサミットが登場する頃には日が傾き始め、モノノケにふさわしく逢魔が時に演奏は始まった。この日は大阪コリア映画祭で競演した趙博が加わった編成。プログラムが遅れていて慌ただしいムードで始まったものの、労働歌(『聞け万国の労働者』『がんばろう』『インターナショナル』)を中心にこなれた演奏が続く。大勢の若者が舞台の前に駆け寄ってきて踊りだし、ソウルフラワーの人気の高さを実感する。中には「おめーら、ホントにインターナショナル知ってんのかよ」と焼酎臭い息でヤジる全共闘世代のおやじグループもいた。モノノケのライブではこのように中川に話しかけたがる人々が多く、そこがまた面白い所。MCは北朝鮮の事が中心だった。

大トリは朴保&切狂言。ライブを見るのは二度目。「いくヨー」(私にとって朴保の呼びかけはいつもカタカナの「ヨー」なのだ)のかけ声で演奏が始まると「はいヨー」とか言って立ち上がって踊り出してしまう。朴保&切狂言のステージは後方から光が出ているように感じる。四方八方に広がる光とともに重いビートがあたりを包み、朴保のヴォーカルがそれを操っているようにみえる。場の空気がゆらゆらとゆらめいている感じ。朴保&切狂言のライブは「なんかわかんないけどかっこいい!」と見た人皆が口をそろえていう。重いビートとなにより朴保のヴォーカルには妖しく抗しがたい魅力がある。

そのまま出演者全員が加わってエンディングへとつながっていった。出演者皆それぞれいろいろな楽器を持ち思い思いに演奏を楽しんでいる。ヒデ坊はサンバ(三板)を、中川はドラのようなものを打ちならし、奥野はちゃっかりステージのど真ん中でアコーディオンをひいていた。

全ての演奏が終わった後で、南北の統一を願いハナ(一つという意味)の大合唱で幕が閉じられた。何よりもこうして共に喜び楽しむことで人々の心はほぐされ共感しあう事ができる、そんなことを実感した一日であった。

溝口恵子 mizo@bakkers.gr.jp 1996.10.19


1996.10.13.SUN, 13:00-
服部緑地野外音楽堂
プログラム
  1. オープニング グループ黎明(春鴬囀・韓国舞踊)
  2. スージー・キム
  3. J・公山
  4. 石田長生&06バンド
  5. 紅竜
  6. 桑名正博
  7. 宇崎竜堂
  8. 姜輝鮮(朝鮮舞踊研究所)
  9. 田月仙
  10. 閔栄治(チャンゴソロ演奏)
  11. 林賑澤(パンソリ)李揆昊(鼓手)
  12. ソウル・フラワー・モノノケ・サミット
  13. 朴保&切狂言
  14. エンディング
96.10.19


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