961027 SONG'S DREAM'S (京大西部講堂)

まずベースとドラムスを従え、リクオ登場。ニューバンドだそう。前半、ニューオーリンズ風のいきおいのよいピアノで盛り上げる。映画『グレート・ボール・オブ・ファイア』を思い出した。日本のジェリー・リー・ルイス、ってとこでしょうか。
こうしたピアノトリオのロックバンドというのは日本ではとてもめずらしいのではないかと思う。なおこの日演奏された曲は全てバンド用に新しく書き下ろしたものだそうだ。

早川義夫、そそくさと登場し一礼するとピアノに向かう。観客が一斉にカメラを向ける。フラッシュで、一瞬目が眩んだほどだった。MCの全くないステージで、しかし、たんたんと、というにはあまりに冥い情念に満ちたうたを1時間強たっぷり聴かせてくれた。最後の2曲をうたう前に今度WOHOLで高田渡とライブをやること、ミニアルバムがでることを語る。MCはそれだけだった。そしてそれだけをしゃべった次の曲の出だしがうまくいかず、2回も中断した。それほどまでにはりつめた演奏だったのだ。

さて、ソウル・フラワー・ユニオン登場。ぼくにとって7月のチキン・ジョージ以来本当に待ちに待ったステージとなった。『向い風』で始める。洋子がコリアのシンバル(ケンガリというのだと思う)を叩く。中川「早川さんにすっかり雰囲気つくられてしもたからね」と、少しやりにくそう。
本日のヒデ坊ファッションは、青いタイツに黄色の半パン、赤い長ソックス・・・かと思ったら、そういう三色のベルボトムだった。上は青い長袖の上に黄色い半袖。その配色に赤い髪を二つ上向きにくくった様はなんとなくデビルマンを思い起こさせるのだ・・・(ごめんなさい)。
『生きる権利』に続き、楽器を持ちかえての『満月の夕』。ピアノの前奏で始まり、一瞬「えっ」と思ったのだが、そういえば、ユニオンのライブではそうなんでしたね。この曲にはおなじみのトロンボーン大原裕も登場。同じ楽器で『闇夜の太陽』『こたつ内紛争』。『こたつ内・・・』のあとまたギターにもちかえるので、少し間があいたのが気になった。
しかし、そのあとは踊り全開状態になってしまい、レポーター失格ですがよく覚えていない。ふと気づくと「ラスト一曲『さよなら港』」といいつつ『もののけと遊ぶ庭』がはじまる。演奏が終わった後、ちゃんと中川が「船は行く船は行く」と歌った(笑)。
奥野がDJ番組で「ニューエストも含めて最高」というようなことをいっていたが、そうなのだろうと思う。ぼくはユニオンを見るのはたしかたった3回目なのだが、どんどんテンションがあがっているのだから。

アンコールには早川とリクオ、大原が登場。早川&中川&リクオ、ジャックスの曲二曲でドスのきいた歌声合戦を繰り広げた後、ソウル・フラワーのみステージに残って『外交不能性』。二回目のアンコールが『リベラリスト・・・』だった。

ところでこの日中盤、新曲『宇宙フーテンバップ』(タイトルは未確認情報。歌詞も全く聞き取れなかった)が披露された。『ジャングル・ブギ』みたいなテンポの曲だ。で、ひょっとしてとてもとんちんかんなことを言っているのかもしれないが、これからソウル・フラワー・ユニオンはジャズっぽい方向に行くのではないかという予感がした。
例えば『平和に生きる権利』の前奏五拍子のアレンジもぼくはジャズっぽいと思う。それから新作『エレクトロ・アジール・バップ』の音作りが全体的にフュージョン的なように感じる。 だいたいこの「バップ」って言葉は何だろう。ロックの黎明期頃の、ジャンプする、フリーに向かう直前のジャズでしょう。 大熊の参加、奥野のジャズ趣味、そして中川が元祖フリージャズのオーネット・コールマンの名をインタビューであげていたことなどからも、今後の方向性としてはありえないことではないと思う。
モノノケサミットというものも、『もののけと遊ぶ庭』という曲が先にあって、出てきたものだ。ニューアルバムの「バップ」という、(なんとなく)意外な言葉も、頭に入れておいていいように思うのだ。

1996.10.31


魂花レビュー