961110 Coke Step Hall 96.11.10 コークステップホール

この日ホールは満員御礼!消防法ぎりぎりの人数が詰め込まれ(多分500人はこえている)皆の期待高まるなか、ライブは「向い風」で始まった。私はケンガリの入ったこのヴァージョンが好きだ。「なかがわあー」と中央に皆が駆け寄ったかと思うと、「ヨーコー」とこれまた左に人が押し寄せる。きょうはツアーの最終日でしかも久々の大阪のライブとあってメンバーも皆うれしそう。 「もうおれらの好きな曲だけやるから、適当に楽しんどってな」

「もうツアー大変でなあ。この人(ヒデ坊)は肺炎になるし、奥野はおとついぶっ倒れるし、おれはおれでついこないだひどい風邪引くし」そんなMCのせいか、はじめのうちは元気のないような印象を受けた。言われてみれば、ちょっと中川の声が枯れ気味な感じだし、ヒデ坊も今日は元気がなさそう。

めずらしくヨーコが進んで聴衆に話しかける。「あんなあ今日みんな変やで。もっとこうぱーっと盛り上がってもええんやで」と繰り返す。中川も「嘘でももりあがってたらこっちもその気になるんやで。」とちょっと不満げ。 そしてやっぱり突然に「あのう、今すごい人気のラジオ番組があってね、」と言い出す奥野。「今日ソウルドアウトになったのもその番組のおかげやと思うんやけど。」「はじめのうち葉書がこれくらい(1cm位)やって今はこれくらい(2cm位)にしかなってない」葉書が来ないのが不満だそう。やはり声が風邪っぽくってMCもちょっと冴えなかった。「スピッツのマサムネくんはこんくらい(15cm位)来てるんやって」と中川にまたも揶揄される。

前半は『ひぐらし』『平和に生きる権利』『霧の雫』『満月の夕』といったようなゆっくりした曲が中心だった。『平和に生きる権利』の前奏は何度聴いてもうっとりしてしまうし、『霧の雫』でのヨーコの歌はあの名曲『ひぐらし』が薄れてしまうほどだ。また、どちらも大熊亘のクラリネットが本当にかっこいい。

この日は2曲の新曲が披露された。『さよなら??』(タイトルは不明。アスファルトの街を猫の目して嘘つく・・・というような歌詞のスローなナンバーでヨーコが歌う。) 『宇宙フーテンバップ』(仮題らしい。『ジャングル・ブギ』みたいなテンポの曲で西部講堂でもやった。)

うれしかったのは『済州島打令〜密陽アリラン』がヨーコとヒデ坊によって歌われたこと。今までは(CDやライブなどで)鄭貴美恵が主なヴォーカルをとっていて、それはそれで良いけれど、やはりメンバーにも歌ってほしいと切に願っていたからである。『アリラン』『トラジ』が好きでいつもモノノケのライブで楽しんでいたのだが、こうして『密陽アリラン』がソウルフラワーのライブで演奏されるなんて私にはうれしいハプニングだった。それに『アマノガワ・フローズン・ギター〜チェジュドタリョン(済州島打令)』はすごく幸福感にあふれていて、まるで上から花が降ってくるような感じだ。

今回はツアー最終日ともあって、バンド、観衆共に盛り上がるのではという期待が過分にあったにも関わらず、1曲目からあとしばらく盛り上がりに欠けたきらいがあった。(とはいっても前半、割合ゆっくりとした曲が多かったせいもある)MCでもさかんに「もっともりあがらんかい」「ちょっと変やで」と繰り返された。一方で「前の方ちょっと押しすぎで、苦しそうや。少し下がったって」と2度ほど。思うに前の一団だけが飛び上がっていて、後ろの方はおとなしかったのでは。前のグループにはおぶったりおぶられたりして踊るはげしい2人組がいた。そんな雰囲気も時間を追うごとに薄れ、『エエジャナイカ』で爆発をむかえた。(でこのへんで記憶があいまい)『エエジャナイカ』『海行かば 山ゆかば 踊るかばね』は今までもライブで聞いていたけれど、『エレクトロアジールバップ』を聞いていっそう好きになった曲だ。

ホールについて一言。広くてライティングもかっこいい。天井が高くて解放感があるが、その分音が広がりすぎてちょっとスカスカに感じる時があった。チキンジョージではいつも音の悪さに耳を痛くする思いだったが、コークステップではそういう感じは受けなかった。どのホールもそれぞれ一長一短があるのかなあ。

全体として満足のいくライブだったのに、気になることが一点あった。さてアンコールというのになかなかメンバーが現れない。ようやく現われた中川が一言「今最後の曲の途中で耳が片方聞こえんようになった。みんなもこんなロックなんて聴いているとこんなことになるから気をつけるように」冷や汗が流れてしまった。その後の曲でも熱唱する中川の顔を見つめながら、『耳は聞こえているのか!中川』との思いでいっぱいだった。

ともかく「12/8西部講堂、12/19,20チキンジョージ、12/22磔磔よろしく!」となんども念を押されたように、ソウルフラワーの皆さんには体調を整えてもらって、年末も期待しよう!

ゲスト:サイツ・大原 裕(トロンボーン)
この日のライブには趙博さんも来ていた。 

『さよならだけの路地裏』『ひぐらし』『平和に生きる権利』
『闇夜の太陽』『霧の雫』『満月の夕』
『あまの川〜済州島打令〜密陽アリラン』
『宇宙フーテンバップ』『ジャングルブギ』
『こたつ内紛争』『陽炎の国 鉛のうた』
『エエジャナイカ』『海ゆかば山行かば踊るかばね』
『レプンカムイ』など
アンコール:
『もののけと遊ぶ庭』『進軍ラッパエレジー』
『小っちゃな時から』(浅川マキ)
『アイヌプリ』
『もぐらと祭り』
『さよなら港(外交不能性)』

*曲に関しては多少間違いがあるかもしれませんが、お許しを。

おまけ:
中川の発言: 1996.11.13 溝口恵子 mizo@bakkers.gr.jp

魂花レビュー