970201 Abiko by Anzai 97.02.01 あびこ発胡散無産ライブ

前の晩はエレクトロ=アジール=バップをコンポにタイマーセットして眠りについた。が、その目覚ましが鳴る前に目が覚めてしまった。われながらすごい気合いの入りようだ。しかし無理もないですよ、誰が何と言おうとソウルフラワーの1か月ぶりのライヴなのだから。 この1か月というのは、現代の音楽産業の中で見ればとても短いインターバルであると思う。しかし、ことソウルフラワーに限って、たったの1か月でも、ものすごく久しぶりな気がしてしまうのだ。これから春までまたしばらく何も無いというのが恨めしい。と思いつつこの日のために買った奥野シャツ(奥野さんみたいに派手なシャツ)に着替える。

早めに会場に着くとリハーサルをやっているのが聞こえてきた。早速そわそわしながらも、この分ではまだまだのようだ、と思っていると、スタッフの方が、「開場は一応3:30になっておりますので、それまでこちらのロビーでどうぞ。あっ、喫茶室もありますよ」などなど、とても親切にしてくださる。 これ以外にも、今回のライヴでは主催者側の細やかな心づかいがあちこちに見られ、とても和やかな気分になれた。例えば、客席について。室内の前のほうには、おとしよりなどのための椅子席や、坐って見たい人のためのスペースが、あらかじめ準備されていた。「若い人はスタンディングで」という主催者側の意志からは、結果的には外れてしまったことなど、確かに問題もあった。だが、賛否両論あろうが、とりあえずイベントを主催する姿勢としては、このような心づかいはとても良いことだと思う。

モノノケサミットでのワンマンライヴは滅多に無い(結果的にはワンマンではなかったのだが)。そのせいかどうか、今日は最近で一番と言っていいほどの客入りだったように思う。ずらっと長く続いた列にどきどきする。さぁいよいよ開場だ。

実際入場してみても、やはりお客さんはかなり多い。あとで分かったのだが、ステージと客席とで高さの差が無いために、後ろの人は全然見えなかったのだそうだ。意図的にそうしていたのかどうかは別として、演奏する側と聴く側との間に差異が無いというのは、本当はとても望ましい、素晴らしいことだと思う。けれども、やはり現実にはいろいろと問題があるんだなあと実感。

まずは浅香残波大獅子太鼓クラブの和太鼓の演奏。演奏と言うより演武と言ったほうがいいほどの迫力で、低い太鼓の轟きに、じっと聴いているだけでも汗びっしょりになった。次は旭堂南海さんのバイオリン演歌。復興節など我々にはおなじみの曲もあり、普段はあまり見ることのない、このような本来の”演歌”は、なかなか興味深かった。

そしていよいよソウルフラワーだ。ステージ袖の扉が開き、暗い室内に光が差し込んでくる、と同時にものすごい喚声。なんとなく、「あぁみんなやっぱり飢えてたんだなぁ」(?)などと思った。逆光にくりぬかれたメンバーの影がステージ上に一人また一人と揃っていく。照明が明るくなると、一層拍手が大きくなった。 と、中川氏、マイク握って開口一番「これはお願い、というより命令です。後ろの人は全然見えへんので、身長順に並ぶこと!もしくは前の人は坐ること!」と心づかい。そんなわけでもうせんの敷かれた「特別席(by大熊)」はたちまち若者で埋まったのだった。しかし逆にこの発言が災いしたのか、今日はいまいち客の元気が無かったようで、踊りたい天使に魔法かけられたわたしとしては、個人的には、不満の残るライヴであったことをさりげなく記しておく。ちなみに中川さん自身も最後にはとうとう耐えられなくなったらしく「あんたらそんなことで満足?ほんまにええの?」などといらついていた(笑)。

いつも演奏している曲ももちろん好きなのだが、2年ぶりの共演というシーサーズとの安里屋ユンタや、ケンガリで趙博さんも加わったインターナショナルは特に印象に残っている。また、シーサーズコーナーと趙博コーナーもあり、それぞれのレパートリーも披露された。そうこうするうちにあっというまに時は過ぎ、「これは坐って聴く曲じゃないで(by中川)」と怒濤のアンコールはだんじゅかりゆしにヒヤミカチ節でおとなしかった客もついに立ち上がり、そしてそして「モノノケサミットのジャンピン=ジャック=フラッシュ!」というさよなら港で爆発!爆烈!!老若男女入り乱れ咲き乱れの大カチャーシーとなったのであった。

ビールがうまい帰り道、いろいろと考えながら歩いた。中川さんが「身長順に」と言ったとき、素直にすぐに後ろに行けなかった自分のこと。たとえ踊りたくても自分の思うように体を動かすことができない人々のこと。始めは坐っていたけど結局立ってしまった自分と、ほとんど最後まで坐っていた座席の人々のこと。 自分が自由であるのと同時に他人も自由でなければならない、と思いながらも、いまだその境地には達していないわたしです。

アンザイカオリ lzh0031@ip.kuec.kyoto-u.ac.jp(1997.9まで) 1997.2.3

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