970201 Abiko by Agatta 97.02.01 あびこ発胡散無産ライブ

あびこライブ主催者のお一人、あがった/木村 雅一さん VYT00134@niftyserve.or.jp に、ライブを開くまでの経緯や当日の様子について原稿をお願いしたところ、ニフティ・サーブのフォーラムの3つの会議室に向けた文章の転載をご許可下さいました。(中山)


「僕たちの僕たちによる僕たちのための物語」その1 天国への階段を登り詰めた僕は、天国の扉をノックする。 真っ冬。2月1日土曜日の朝8時半。僕たちの物語の最終章が始まる。 関西研修センターには、僕たちのそれぞれが顔をほころばせながら、集まってくる。 僕はといえば、この寒いというのにだ、薄手の黒のジャンパーに白いシャツ、 薄い茶色のマフラーを首に巻いて、お気に入りの茶色のトレッキングシューズで。 昨晩、悩みに悩んで決めた出で立ち。さりげなくだが、気合いを入れてセレクト。 朝食でのミーティング。朝から、ラーメン・ライスの強者がいる。ビシッと、だ。 一日の流れを確認し、はやる気持ちにブレーキをかけておく。一日はこれから。 北海道からお一人、東京からお二人。心強いお仲間の顔も、交えて。 さぁ、4トントラックが入ってくるのが見える。ウエスト・ヴィレッジのPAの到着。 「朴保&切狂言」の際に始めてで、お世話をかけっ放し。気の好いPA屋さんだ。 いや、気の好いではない。とてつもなく気の入ったPA屋さんに、違いない。 音楽が好きで、熱気が好きで、意気に感じてくれる、まさにプロ中のプロ。 僕たちには、お礼の言葉が、ない。感謝をして、感謝をして、感謝だけを、贈る。 金も経験もコネもなく、あるといえばありあまる熱気だけという僕たちに、 ありったけのプロの技と心意気を注いでいただく。黙々と裏方に徹し最強のサポート。 冗談を飛ばしながら、仕事はさっさと進めていく。その鮮やかさに、脱帽。 会場のセッティングの打ち合わせを済ませ、各自がそれぞれの仕事へと散っていく。 机を出し、椅子を出し、椅子を入れ、毛氈を引き、じょうしき幕を張る。 受付をつくり、張り紙を貼り、ポスター貼りをしに出かけ、買い出しに走る。 手を休めている間はない。それぞれがそれぞれのやり方で、自分の責任を果たす。 その間にもスタッフは増えていき、軽口があちらこちらで飛んでいる。晴れやか、だ。 もう一度、全員でのミーティング。昼からの持ち場を決め、万全の体制を目指す。 混雑を如何にして解消するのか。どうすれば、僕らのライブを心地よく楽しめるのか。 太鼓位置の打ち合わせもすめば、すぐに昼食。さぁ、開演はもうすぐ、だ。 ソウル・フラワーたちが、ぼつぼつと集まり出す。気持ちが踊り出すのが、わかる。 大熊さんとシーサーズは昨夜から。内海さんが、一番に到着。 中川・河村・高木・高木さんが、機材とともに車で到着。一番近い奥野さんは徒歩。 少し遅れて、伊丹さんが電車でやってくる。駅からのタクシーが迷っちゃって。 リハーサルが始まり、オトが聞こえ出すと、足がステップを踏む。 スタッフの唯一の特典。リハーサルを食い入るように眺める。中川さんの顔が、硬め。 2時半が過ぎる頃、受付を開始。大挙して観客がやってくるはず、だ。 3時になっても、人はまばら。どうなってるんだ、いつも。読みはことごとくはずれた チケットぴあの百枚は売り切れ。電話予約だって五十はあった。そんなはずは、ない。 不安が声になるそんな一歩前。ぞくぞくと観客が集まってくるではないか。 3時半になると、受付前に並んでもらう。当然、車椅子の人が先頭に、だ。 列が、どんどんと長くなっていく。後から並ぶ人に、お礼を言い、待っていただく。 GOサインで入場。どんどん人が入っていく。老人たちもやってくる。子どもも、だ。 「震災基金カンパ」のビールやジュースが売れていく。もう暖房はいらない。熱気。 スタンディングの会場に人がうまる。高齢者用の椅子席も一杯になって。熱気。熱気。 列が途切れても、人が入っていく。どんどんと、どんどんと。熱気。熱気。熱気。 太鼓の音で、幕は切って落とされる。高校生たちの和太鼓だ。床が震えている。 汗が飛ぶ。歓声も飛ぶ。拍手が沸く。さぁ、これからだ、ぞ。これからが、始まり。 太鼓終わる。ヴァイオリン演歌だ。旭堂南海さん、だ。好男子の講談師。 バンカラ書生風の出で立ち、ギャグを入れながら、笑いをとりながら、演歌師を演ずる 同じ地平でのステージ。これでなきゃっ、ストリートの音は。僕たちの考えが、裏目。 スタッフが後ろからみると、演者の顔がまったくに見えない。もう、なにも見えな い。連絡が、来る。中川さんのところに走る。MCでお願いして欲しい。 みんなが見えるように!背の高い人は後ろへ!という提案。初っ端の切り出しで。 それでも「見えん!座ろう!」と後ろから声が飛ぶ。渋々に座り出す観客。申し訳なく。 僕は、ステージ近くから観客席を見る役回り。何かあったら、すぐに飛んでいく。 でも、前から見ていると気が気じゃない。座ってはもらえたが、それじゃ、踊れん! 若者は踊りたく、それで当たり前だ。身体がおもわず動き出す唄。それが、ヤツらの唄。 それに、お年寄りの反応を確かめる。楽しんでもらえるだろうか?大きな音に怯まない。 お年寄りの顔を怖々に眺め、楽しんでもらえることを、願う。じゃなかったら・・・。 あっ、顔がほころびだした。手を打ち出した。肩が揺れている。 あ〜っ、好かった。やっと、一安心。で、後ろで座っている人からステージは見える? 後ろにまわるとなんとか顔は見えるんだが、踊りだしたくてうずうずしている雰囲気。 シーサーズで休憩中の中川さんにまたお願いする。最後は、みんなが踊れるように。 お年寄りたちは、楽しんでもらえている。最後は、踊りだしたい人のために。 無理に無理をお願いする。「うん、そう思っている」こともなげに、快諾。 会場のいろいろなことが気が気ではなく、唄の方は聞いているようで、そうもいかず。 セットリストを、書き込めることもできず。でも、ここに一枚の紙がある。 リハーサルの前にいただいた中川さん直筆のセットリストのコピー。 僕は、スタッフの役得で、しっかりと家に持って帰った。今、ここに、ある。 1.革命歌〜解放歌 2.美しき天然 3.聞け万国の労働者 4.デモクラシー節 5.アリラン 6.がんばろう 7.満月の夕 8.安里屋ユンタ(withシーサーズ) シーサーズ・コーナー 9.竹田の子守唄 10.橋(vo. 趙博) 11.インターナショナル 12.ありがたや節 13.復興節 14.東京節 アンコール だんじゅかりゆし ヒヤミカチ さよなら港 「満月の夕」は、さすがにしっかりと聞いた。日本ロック史上の名曲。間違いなく。 この時だけは、その場の心配も吹き飛び、解き放たれて行く心を、鎮める。 「インターナショナル」以降なら、もう僕はなんもかも忘れた。 スタッフの役目なんて、この際、くそ食らえ! ビールの売上金を袋に詰めて、我を忘れて踊り出す。最前列で、もう思いっきりに、だ。 曲が終わる度に、意の一番に歓声を挙げ、それがもう僕の役割ででもあるかのよう。 みんな踊りだしている。踊り出せば好い。踊りだして、大地に足をしっかりとつける。 大地と一体、だ。踊り出す身体こそ、自然。満を持して踊り出す。それに、心も、だ。 諸手を挙げて、力一杯拍手をおくる。伊丹さんや中川さんと、目が会うのが、判る。 こっちを向いて欲しい、だなんて、完全に舞い上がっている僕が、踊る。 二度目のアンコールは確かめに行く。「行きます!」声が返ってくる。 「さよなら港」で、何がなんだかわからない興奮の頂点。天国は、きっと、ここ! 終わる途端に、入り口へと飛んでいく。知った人を見る度に、声をかける。 「好かった?!」「そりゃもう!」顔がほころんでいる。間違いなく、言葉通り。 「アンケート用紙をください!」若者から声がかかる。「ごめん。売り切れ」 「じゃ仕方がない。あんまり好かったんで書きたかったんだ」もう充分!ありがとう! 会場の撤去を始める。まずPAの機材を出していく。テキパキとした指示にそって。 終わると、机と椅子を運び入れる。嬉しいじゃ、ないか。 用意するときの倍以上の人たちが、整然と動いている。早い!とっても早く片づく。 ぞろぞろと歩いて、打ち上げ会場へ、だ。その間も続く自己紹介。 FBEATはもちろん、FWBEATやFPOPULARのみなさん、あっちこっちのHPからも。 インターネットのホームページ関係の人々、メーリングリストのみなさんも。 これまでの胡散無産で出逢った人々、近在から遠方のみなさんまで。 様々な人が、様々に出逢う。どれだけの出逢いを重ねて、今日という日があるのか。 打ち上げでの僕の醜態を述べない。心ゆくままに酔い。心ゆくまでに高いテンション。 いつもの通りに、お酒がからっきしダメな僕なのに、だ。 声一杯にしゃべりまくり、早口にまくし立てるわぁわぁとしたやり取り。 酔生夢死のひととき。欣喜雀躍な時が巡り、破顔一笑に、喜色満面。 別れの時が、やってくる。ソウル・フラワーの面々が車で去っていく。 ひとりひとりにお礼を言い、ひとりひとりに感謝を伝える。精一杯に、あらん限りで。 中川さんと静かに強く、握手をした。「また、きっと一緒にやろう!」 涙が出なかったのが、不思議な位に、だ。コイツは、ぜったいに、信じるに足る!!! ノックした扉が開くと、そこでは、たくさんの人たちが、様々に唄い踊っている。 天国の扉を開けちまった僕たちは、きっとまた扉が開くことを願って次の階段を登る。 僕の、「僕たちの僕たちによる僕たちのための物語」最終章はこうして閉じられる。 が、その中で僕たちが知ったことは、いつものように、FWBEAT3番「大通り」に。 天国の扉、それは勝手に開くもんじゃ、ない。天国の扉を開けるのは、それは、僕ら! 97/02/04(火) 22:15 あがった/木村雅一(VYT00134)
「僕の、僕たちの僕たちによる僕たちのための物語」その2 「僕たちの僕たちによる僕たちのための物語」を語ろうとする僕は、まったくの上の空で。 あれは真夏のことだ。じっとしているだけでも、汗が流れ出すような日。 大阪は扇町で、スタジオを探して歩いた。汗かきかき、伊丹さんとお逢いできる、日。 とにかく、直接にぶつけるしかない。コネなんかありゃぁしない。まったく、だ。 ブレスト音楽出版に電話し、伊丹さんに伝えていただき、やっと伊丹さんにまで辿り着く。 「楽しいことなら、相談しましょう」お電話で、伊丹さんはそう言って、笑っていた。 で、ようやっとお逢いできる日になって、こうしてスタジオを探し回っている。 レコーディングの最中に、その合間を縫ってお話ができる。 河村さんとお話しし、中川さん、それに遅れてこられた伊丹さん。ゆうに五時間も。 「僕たちの僕たちによる僕たちのための物語」は、こうして始まる。 まずは、FBEATとの出逢いだった。 こんなステキな場所に出逢え、その上、出逢える人々の多彩さ、素晴らしさ。 うつつを抜かし僕は、夜毎夜毎の饗宴。 で、教えていただいたのが、ソウル・フラワー・モノノケ・サミット。 素晴らしい唄たちだ。ストリートを徘徊しながら、エネルギーを喰らう。 音盤からの、奔出。ライブに出かけ、ノックアウト!スゴイ! あぁ、なんていうヤツらだ。三〇代にして、果敢に前を向いている。 心と身体が揺り動かされた時、心を支配する考えが、あった。 四〇代を迎え、脂がのりきっているはずの僕は、何をしている? できること、したいこと、僕が願うこと。できるはずだっ!できないはずがない。 そんな時、「春一番」オフの準備が進んでいた。大阪へ集まる、「春一番」に集まる。 全国から、お顔も知らないお仲間が、だ。できるはずが、ない。と思いながら、、 、 それがどうしたと言うんだ。刻々と具体化していくじゃ、ないか。 自分たちが、身につけてきたノウハウを持って、夢を現実としていく力。 僕たちには、力がある。四〇年間、無駄に生きてきたわけじゃ、ない。 ちょっとだ、無理をすればだ、ほんのちょっとだ、お金と時間を持ち寄り、無理をする。 一人での無理なら、それは無理難題。それは無理なんだ。 でも、少しづつ無理を集めれば、無理が矢理となり、無理は無論となる。無論、可能 !で、「僕たちの僕たちによる僕たちの物語」の準備がはじまる。 そんなことは一切考えていたわけじゃ、ない。でも、「春一番」は実現した。 さぁ、みんなの夢を語ろう。できることから、始めてみないか。 無鉄砲にも、始めてみる。五人のメンバーから、はじまる。 あっちこっちへと、お願いにあがる。金もないコネもない、でも、情熱なら、負けない。 ない袖は振れない。ある袖を、振り続ける。汗をかくことなら、お任せ! ラインアップを相談する。自分たちが見たい、聞きたい。それに知って欲しい。 みんなには、知られていない、でも、熱いものは、いっぱい、ある。 流行りのモノではなく、といって、今が旬、これからが花な。 力湧くモノ。力こもるモノ。力をこそ、入れたいモノ。力漲るモノ。 できあがったラインアップ。「朴保&切狂言」で、スタートを飾る。 生きのいいところをみつくろって、上方落語。これから花開く、志高い面々。 映画「大阪ストーリー」は、ぜひ中田監督を交えて。 ソウル・フラワー・モノノケ・サミットは、言うまでもない。ヤツらで、ファイナル な〜んも、判っていない。PA屋さんなんて、知らない。準備だって、皆目。 とにかく、チラシをつくる。これなら、お手の物。 安っぽいものではなく、僕らの心意気が伝わるような、一枚。 勿論、プロにお願いする。素人の熱情を、しっかりと形にしていただくことが、肝要。 ちょっとしたトラブル。できあがった二万枚のチラシ。撒けばいいこと。 僕たちの造ってきたネットワークで、お願いし、一人づつ一人づつお願いして歩く。 映画館やライブハウスにも、飛び込んで、お願いを重ねる。ダメで、もともと。 結局のところ、三千枚が残り、ということは一万七千枚は、撒けたんだ。 日が経つ内に、あっちこっちでお見受けするようになるチラシに、ほくそ笑んだ。 で、ライブをやる度に、スタッフが増えていく。資格は、やろう、という気持ちだけ。 後は、それぞれが自分の力で進める。持ち寄れるのは、自分たちの持つ力と夢と情 熱。それだけがあればもう充分。あとは、走りながら考えて行けば良いじゃ、ないか。 誰に指図されることもない。誰を指図することもない。 僕たちこそが、僕たちの唯一のボスで。我慢することなんか、しれたこと。 自分たちの夢を実現するのに、何を懼れることがある!懼れをこそ、ほっぽる。 願い、願い、願う。僕たちの前に広がっていく道を、自分たちがつくる。 無難なことなら、無難にこなせる。無鉄砲なことだから、無鉄砲に進む。 すでに、スタッフは十人を越して、それぞれがそれぞれの思いで、参加される。 いろいろな力が集まってくるゾ。それぞれの個性が、光る。 その上で、程良い間隔を忘れはしない。少しづつ、心を開いていく。 せいぜいがここ二,三年のおつきあい、ネットワーカーなら昨年からのおつきあい。 誰もそんなことを気にすらしない。もうずっと昔からの友人でもあるかのように。 それぞれが声かけながら、それぞれのリンクを楽しむ。楽しんで、繋がっていく。 行き違いがあって、当然。無かったとは、言わない。つい愚痴がでるときも、再三。 だから、面白いんだ。十人十色で、始めよう。違うから、違いが光る。 で、想像力を働かす力。相手のことに、思いを馳せる。 ひとりひとりは、ひとりぼっち。せいぜいでも、ふたりぼっち。 で、僕らは「僕らぼっち」となった。でも、すぐに「ぼっち」なら越えていける。 述べ六百人程の参加者が、あっちやこっちでリンクしていくんだ。 たかだかの六百人かも知れない。でも、五人からの六百人という「たかだかさ」を誇る。 たかだかで、良いじゃ、ないか。「たかだか」からしか始まらず。 仕組まれたものじゃ、ない。連れもっては誰も行きたくは、ない。自分の道を歩む。 すると、一緒に歩いているたくさんの人に気づく。そんなもんじゃ、ないか? それに思う。同じ空の下から、声援を送ってくださっているお仲間がいる。 僕たちは、僕たちの空の下から、感謝の気持ちを贈る。精一杯に、だ。 空なら、ずっと続いている。遮るモノは、なにもない。充分に、届いています。 僕たちは、感謝の気持ちを贈り続けます。みんなが、僕たち。みんなが、一緒。 また、長くなってしまった。とりとめもなく、際限もない。 ありがとうという言葉は、今なら僕たちのためにある。 「天にありがとう」をかける。それはまた僕たちに返ってくる。 「僕たちの僕たちによる僕たちのための物語」は、とりあえずこのあたりで、終わる。 でも、「僕たちの僕たちによる僕たちのための物語」はどこからでも、始まる。 いつからだって「僕たちの僕たちによる僕たちのための物語」を始めることは、できる どこからだって「僕たちの僕たちによる僕たちのための物語」を始められる。 だれだって「僕たちの僕たちによる僕たちのための物語」を始めることは、可能だ。 だからこその「僕たちの僕たちによる僕たちのための物語」。 できることから始めてみないか?そう思いながら、上の空で僕は、空を見上げる。 97/02/04(火) 22:27 あがった/木村雅一(VYT00134)
とりあえず、セット・リスト、だ。 1.革命歌〜解放歌 2.美しき天然 3.聞け万国の労働者 4.デモクラシー節 5.アリラン 6.がんばろう 7.満月の夕 8.安里屋ユンタ(withシーサーズ) シーサーズ・コーナー 9.竹田の子守唄 10.橋(vo. 趙博) 11.インターナショナル 12.ありがたや節 13.復興節 14.東京節 アンコール だんじゅかりゆし ヒヤミカチ さよなら港 といっても、完全なものでなくて、申し訳がなく。 とにかく、僕らは走り回っていたりする。聞きたかったんだが、聞けず。 で、中川さん直筆のメモからのリスト。来られた方、ご指摘を、お願い。 でも、僕らは後悔はしない。こんなステキなライブで、盛り上がれた! ひるむんじゃ、ない。僕はずっと僕を叱咤していた。 ヤツらは、全身全霊で、やってくるに違いない。全身全霊で、ぶつかる。 たかが音楽じゃ、ないか。命とられるわけじゃ、ない。 たかが音楽が、僕らを変えるんだ。ってことを僕はもう充分に知った。顛末は、大通り。 リハーサルが始まる。僕はほとんどリハーサルも見ることはできなかったが、 中川さんの顔が厳しいということは聞いていた。 思いの外に、リハーサルが長い。一時間以上も、たっぷりとして続く。 なにしろ、今年始めてのライブ。で、少しばかりライブからは遠のく、というお話。 趙博さんとのジョイントなら、昨年末も。でも、シーサーズとなら二年振りという。 念入りなオト合わせが続く。気合いの抜けたオトはださない。ヤツらの、それが信条。 直前での電話によれば、体調などもあって一時間のライブになるという。 残念だが、体調の不良なら致し方なく、一切合切をお任せする。 ヤツらを信じる。なまなかなことで、終わるはずがない。そんなヤツらでは、ない。 セットリストのメモを貰うとき、「ヴォリュームは、ある」と不適に笑う、ヤツ。 ヴァイオリン演歌が始まると、客席へ走り、見にいくんだ。ヤツらが、、、 で、後ろからは見えない。MCできっちりと言います。中川さんが宣言する。 冒頭、いきなりの提案。みんなが見えるように、みんなが楽しめるように。 革命歌から解放歌へと続く。解放歌は、ずっと前から僕がお願いしていた。 差別に苦しむ思いが重い。差別からの解放を願って止まない解き放ちの唄。 僕の先輩たちが唄ってきた。僕たちが唄い、僕たちの子どもも唄い継ぐ。 熱と光を願って止まない、唄。ヤツらが唄うにこそ、相応しい、唄。 年寄りは正直だ。顔がほころんでいくのが、判る。身体の力が抜け、場に寄り添う。 これだけの若者がいるんだ。狭く暗い、会場。大音響。じゃなかったら、耐えられない。 アンケートは言う。「後ろのおばちゃんがしゃべってました。あのピンクの髪の子は、 あんな色してるけど、きっとええ娘やと思う」そうだ。そうだ。大いに、そうだ。 「満月の夕」になると、我と我が身を忘れる。心の震えが、身体の中を走るんだ。 シーサーズは、まったく知らずにいた。かろうじて、お名前は読んだことが、ある。 ぶうちさんに散々と吹き込まれ、もう頭の中は洗脳状態にあった。 「もののけ寄席」で聞いた。始めて聞いた。まだまだ途上にあるようだが、着実な途上。 実に、すがすがしくも、鮮やか。当然、CDは買い込んだが、聞く間がない。 リハーサルでは、鼓弓の曲もやっていた。本番ではなかったのが、残念。 趙博さんの「橋」はこなれている。随分とジョイントで、唄われつづけた曲。 大阪で唄い、大阪を唄う。大きな趙博さんが、もっと大きく見える。 さぁ、今世紀最大のヒット曲。インターナショナルが鳴り響くと。 もうじっとしていることは、ない。身体中くねらせて、踊り跳ねるがいい。 僕らももう、スタッフでいることはない。踊れ!踊れ!踊れ! 最前列に立っていた僕は、もう完全に舞い上がっている。 何がどうなろうと、誰がどう言おうと、僕はヤツらのオトを充分に満喫する。 身体一杯にヤツらのオトを溢れさせ、溢れんばかりの高まりを倍加させる。 煮えたぎったオトに、僕はオトなしく従う。やたら、満足感が、ある。 そそくれだったオトに、僕はオットと声を挙げる。やたら、興奮が、押し寄せる。 丸みを帯びたオトに、僕はオト沙汰をつける。やたら、一体感に、はねる。 弾けて跳ねるオトに、僕はオトこを忘れる。茫然自失、世界が一方通行に、なる。 出鱈目に書き連ねる。出鱈目に書き連ねてみる。でも、出鱈目のステキを知った。 スタッフとして始まったライブは、観客の一人となって終わる。 頭の中が真っ白で、自分ではセットリストを書けやしない。 そんなことで、中川さんのメモからのリストを書くことから始める。 違っていたりしても、きっと誰かに書いていただける。と勝手に思う、不躾。 ライブに参加していただいたみなさんに。 苦言も含めて、どんどんと書いていただくことを、僕は願って止まない。 なにしろ、僕のライブ報告なんて、てんであてになりやしない。 舞い上がったまま、あがったからのお願い。どんどん書き込んでくださいな。 97/02/04(火) 22:29 あがった/木村雅一(VYT00134)
FBEAT、FWBEATより転載

魂花レビュー