970501 Osaka Coke Step by Anzai 97.05.01 大阪コークステップホール

学生の本分は学問である。しかし本日ばかりはそんなことは言ってられません。ということで当然授業はさぼって、一路大阪への電車に乗り込んだのであった。長い道のりも、つれづれに考えながら電車に揺られていくと、あっという間だ。とくに今回は、「ニューエスト・モデル再結成!」だの「ソウル・フラワー家出のすすめ」だの「”超”ジャズ歌謡」だのと、いろんな話を事前に聞いていたから、ますます邪推をしてしまう。また、実を言えば去年の11月のコークステップホールでのライヴがあまりいいものではなかったので、一抹の不安も拭いきれない。 いったい今日のライヴはどうなるのだろう?

ホールの入っているビルであるビッグステップへ、16:30頃到着。まずは様子を見ようと、エスカレーターに乗って6階のホールまで上がる。と、開場1時間半前だというのに、階段に並んだ手持ちぶさた顔の列はごく短い。自分のことは棚に揚げつつ、「SFクリークって、どうしてこうマイペースなのかねぇ」などと嘆いたのであった。いったんホールを離れて時間をつぶし、17:40頃にもう一度ホールへ戻ってくる。と、あら不思議。様子がすっかり変わっていたのであった。どうやらさっきのは、当日券の発売待ちの列だったらしい。あれで当券待ちならわりといけてるかも、などと思いながら、ずらりとできた列に加わる。自分の目で確かめたわけではないが、すでに6階から4階ぐらいまで列は続いているようだった。

ここで個人的に不満だったことがある。魂花時報先行販売のチケットを買った人とプレイガイドのチケットを買った人とが、ごちゃ混ぜになってしまっていたのだ。これじゃあせっかく予約した意味がないじゃん、とちょっと怒り気味。結果的にはちゃんと分けられたようだったが、それ以外にも、細かい点で今回はスタッフの不備がいろいろと目についた。しかしまあ文句を言っていてもしょーがない。なにしろ今日は半年ぶりのSFUのライヴなのだ、腹をたててるだけ損というものである。楽しまなくては、ねえ。

入場後しばらくして、「あとのお客さんが入れませんので、お立ち下さい」というスタッフの声。運良く前のほうが取れたわたしが振り返ってみると、さすがにホールの後ろのほうは余地があるものの、ほとんどの人たちにとっては身動きがとれないほどの混み具合。ますますうきうき、DJさんが流しているBGMを口ずさんだりしてみる。というのは言い訳で、要はとにかく何かしていないと落ち着かないのです。ここでは「知識を得て、自転車に乗り、心を開け!」がかかっていたので、開演前だというのに軽く盛り上がってしまったのだった。

19:00を少し過ぎたところで、ついに、ついに、あの開演SE。それまでのBGMに溶け込むようなSEだが、聴き逃さずに早速歓声があがる。浮ついていた雰囲気が一瞬静まって直後に爆発する、わたしはこの瞬間がいつもとても大好きだ。「中川さーん」「ヒデちゃーん」などなどの叫び声も次第におさまり、メンバーが楽器を準備するまでの少しの間が空く。さながら息を詰めるようにして待った魂花好き達が、曲が始まったその瞬間に一斉にうわっと沸き立った。なんと「ソウル・フラワー・クリーク」。言い訳するようだが、その盛り上がりは、言葉にしようとしてできるものではない。

1曲目が終わったところで、突然伊丹さん&内海さんが退場。あれ?と思った途端に、次の曲が始まった。「もっともそうな二人の沸点」、「杉の木の宇宙」。なるほど、ニューエスト復活だ。と同時に、今さらながら、伊丹さんの耳がかなり悪いんだということにも気が付いた。全体を通しても、伊丹さんは出たり入ったりで、そのたびにひやひやさせられる。あんなに楽しみだったライヴ中にも関わらず、音楽をしていく上で耳が悪いということがどんなに大変なことなのかというのを垣間見た気がして、ちょっと沈んでしまったりした。と言いつつも、直後には「いぇー!!」と叫んだりしているのだから、全くひどい話だ。あーあ。

曲は緩急取り混ぜて、良いリズムで進む。「龍宮へようこそ」「向い風」で踊り狂ったあとは、ゆったりめの「ロンドン・デリー」「霧の滴」「平和に生きる権利」という具合だ。また、要所要所の区切りめでは、しーんと静かになってしまったりもしたが、けっして不快なものではなかった。個人的には、それは”どうしていいかわからないとまどいの静けさ”ではなく、”次に何が起こるかとどきどきしている静けさ”だったのだと思う。 また、ニューアルバムがでたばかりだというのに、またもや新曲も披露された。ニューエスト形式での「おんぼろの夜明け」に「落日エレジー」、テンポ軽快な「ロンドン・デリー」、内海さんの唄う「カモナ・マイハウス」がそれである。まったく、少しも同じ場所には留まっていないんだからな、と嬉しくなるのだ。 ただ、期待していたホーンのゲストはなく、管楽器といえば大熊さんのクラリネットとサックスだけで、”超”ジャズ歌謡、というほどにジャズっぽくなっているわけではなかった。仕方ないと言えば仕方ないのだろうが、今回のニューアルバムがライヴではどのように表現されるのか?と思っていただけに、少し寂しい気もしたのだった。(いえいえ、もちろん大熊さんは最高だったんすよ。念のため。)

そろそろライヴも佳境に入る。確かこのへんでだったと思うが、なんとダイビングしてる人まで登場した。すぐにスタッフに取り押さえられていたものの、メンバーは演奏しながらも苦笑していました。ははは。 「エエジャナイカ」「海ゆかば山ゆかば踊るかばね」「もののけとあそぶ庭」と3曲、踊りに踊って本編は終了。即座にアンコールを求める拍手が始まるが、疲れているせいか全員のリズムがなかなか揃わない。ようやく揃ってきたところで、それを待っていたかのようにメンバー再登場、荘厳と言っていいほどに、始まったのは、「進軍ラッパエレジー」。いつもはこの曲が始まると悪い意味で落ち着いてしまうのに、今日のこの曲は本来の雰囲気、神秘性とでもいえるものを取り戻していたと思う。「テルママ」で盛り上がった気分は、最後の「リベラリストに踏絵を」で、一気に本日何回めかの爆発をしたのだった。

一週間たった今でもまだ軽い興奮が続いている。5月病というほどではないが最近落ち込み気味だった心に、いい衝撃があったようだ。残念ながらこれから半年ほどライヴは無いということだが、このテンションを保ったままでいつまでも待っていようと思う。

アンザイカオリ lzh0031@ip.kuec.kyoto-u.ac.jp(1997.9まで) 1997.5.9

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