970518 Festa in Minatogawa by Anzai 97.05.18 障害者支援フリーマーケット〜フェスタin湊川

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わたし達は、皆、生きている。だが、所詮”生”なんてものは、”死”に向かってた だひたすらに突き進んでいるという事実に過ぎない。何かをどうにかすることで、こ の”生”を肯定的に促進することなど、可能なのであろうか?

なぜ、あんなに盛り上がってしまうのだろう。唄っている人達がいて、聴いている人 達がいる。それだけなのに、なぜ、あんなに盛り上がってしまう瞬間があるのだろう。

同調、とは、「調べを同じくする」という意味なのだろうか。単に旋律という意味で の調べではなく、生命の鼓動、バイオリズムとでもいうべき調べ。命のリズムが、緩 やかにまた急激に昇ったり降りたりして続いてゆく。そんな中で、時折、わたし達の ”生”は同調する。長かったり短かったりする”生”が、一切のことに関わり無く、 それでも時折、見事にぴたりと重なり合う。そして、その重なり合っていく過程で、 同調が起こる。そして、その同調が起こっていく過程で、盛り上がってしまう瞬間が 生まれるのだと信じている。瞬間が瞬間で終わってしまうこともあれば、瞬間同士が 連なり合って長い時を綴ることもある。ただ、どんなときにも共通してはっきりと言 えることは、「”生”は無駄ではない。」ということだ。

「今日は適当にやってとっとと帰ろうと思ってたけど、そういうわけにもいかへんみ たいやね、この雰囲気は。」中川さんにこんな台詞を言わせてしまうのが、同調でな いとしたら、いったいなんだというのだろう。これほどのちからをもった、同調、な のだ。

祭をつくる。祭にくる。つくるほうの気迫だけでも、くるほうの期待だけでも、同調 は生まれない。本来、祭なんてものは、単なる形式に過ぎないと思う。「何かをマツ る」という目的を大義名分として、人が大勢集まる場。その共通の目的をきっかけと して、人が大勢交差する場。しかし、その祭を通して、グルーヴが生まれる。作るほ うと来るほうとの本気の”生”が同調して、目には視えない(かもしれない)うねり をつくる。このうねりが、つまり、盛り上がってしまう、ということなのだろうと思う。

で、そんな我々の同調怨念は開始早々から中川さんの三線の弦を切り、河村さんの十 八番ともいうべき「リンゴの唄」「青い山脈」を聴けることとなったのであった。「 ベースを弾きながらの唄はあまり練習していなかった」というだけあって、なかなか 大変そうだったが、なにしろ久々ということで、中川さんの受難にも関わらずいきな り会場が湧いた気がするのはわたしだけだろうか。それ以外にも、内海さんによる予 定外の「カチューシャの唄」などもあり、今日は前代未聞の3人唄い回しという珍し い日だった。

今回のイベントには、ほかに、趙博さんやおーまき・ちまき&のむらあきさん、みの おセッパラムの皆さんなどが参加されていた。この顔ぶれを見たら、当然のことなが らセッションを期待してしまう。まさしくその期待どおりに、パギーのステージでの 最後の曲である「橋」には、モノノケから5人が加わり、見事な演奏を観せてくれた 。また、モノノケのステージでは、ケンガリのパギーやみのおセッパラムその他が要 所要所で賑やかに乱入してくれ、ただでさえ暑い会場がますます熱くなっていたので あった。

さて、予想通り「聞け万国の労働者」になったところで、はじけた若い衆が跳び上が り、ひゅいひゅいひゅいと身のこなしも鮮やかに踊る。まだ耳慣れない新曲の数々に 、「アリラン」「トラジ」といった今日ならではの曲。もちろん「満月の夕」では会 場中が大合唱だった。「がんばろう」「インターナショナル」などのダンス・ナンバ ーで若者を満足させつつ、一方では80歳過ぎというおじいさんまでもをその熱狂の うねりに巻き込んでしまう。毎度毎度の魔法みたいなこの素敵な手練手管には、もう すっかり慣れたつもりでいても、やはりひそかに驚嘆してしまう。

けっして強制するわけじゃない。だが、心から全ての人を誘いたい。だまされたと思 ってでもいい。唄ってみてください。踊ってみてください。どんなかたちででもいい 、参加してみてください。たったそれだけのことで、作るほうと来るほうとの間にそ びえる壁はあっという間に飛び越えられる。壁を飛び越えた先にある世界は、今まで のものとは全く違うのかもしれない。しかし、それに驚く必要も、ましてやそれを恐 れる必要も無い。参加する、そのこと自体は、単なる一つのきっかけに過ぎない。た だ、そのきっかけから、一体いくつの可能性を見つけ出せるのかは、それぞれの”生 ”に対する姿勢によって、違ってくるのだろうから。もう一度言いたい、”生”は無 駄ではない。

「復興節」、「東京節」、そして奥野さんのおたけびがいつもより深く耳に残った「 さよなら港」、怒濤のラスト3曲の本編に、会場がそれを許すはずもなく、大幅な時 間オーバーにも関わらずのアンコールは「安里屋ユンタ」、そしてそしての「トゥル ルンテン」。ステージに跳び上がって舞い踊る観客達まで登場し、ついに本日の祭は 終わりを告げたのであった。

実は今回わたしは、前日と当日とのたったの2日ではあるが、スタッフとして参加し ていた。祭をつくる側として、いろいろな苦労疲労があったが、それもこの盛り上が りで一気に吹っ飛んでしまったことは言うまでもない。何はともあれ、「がんばろう 」で初めてモノノケで酸欠になってしまうという嬉しい経験の今回のライヴは、個人 的には今までで2番めといえるほど素晴らしいものでした。

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アンザイカオリ lzh0031@ip.kuec.kyoto-u.ac.jp(1997.9まで) 1997.5.9

魂花レビュー