97.08.16 Mononoke in Kotobuki, Yokohama 97.08.16 寿町フリーコンサート(横浜寿町)

「さよなら港」でダイビング客がでた、といううわさの寿町フリーコンサート。ぼくは初めての見物になるが、バンドの意気込みもファンの期待も並ではない。6-7時間の長丁場だし、真夏だし、かなり身構えて望んだのだが、さいわいというか3日ほど前から関東(かな)はえらく涼しくなったそうで、あまりの涼しさに拍子抜けもしたが、ひとまず助かった。

石川町の駅を降りて、なんか見たことあるところだなあ、と思ったら、それも道理、中華街のある駅だった。その反対側に寿町があるのだ。寿町のほうはハングルの看板が出た飲み屋(?)などがならんでいた。3時過ぎに現地に着くと「渋さ知らズ」の演奏がすでに白熱しており、見物場所を確保しようとしている間に朴保登場。朴保バンドは残念ながらこの日出演がなく、かわりに「渋さ」に朴保だけが入って「ヒロシマ」だけを演奏した。あいかわらずいい声。一曲だけとはいえ、充分インパクトがあった。

他、東京ビビンパクラブなど、これだけのバンドが集まったイベントはなかなかないと思われるいいバンドがたくさん出た(中川「さっきビビンパみてほんまに感動してねえ。おれらがトリでええんかと思った」)。ぼくは沖縄民謡を取り入れたダンサブルなバンド「寿」が気に入った。あんなに自然にからだが踊ってしまったのはひさしぶりだった。そして暴れる客に眼鏡を飛ばされたりしながらもぼくもしっかり暴れ、気がつくとリュックの中身を全部ぶちまけていたのだった・・・。女性ボーカリストが「踊るのはいいけどケガしちゃばからしいよ」などとコメントしていたが、ステージの前に(せまいけど)踊り場がちゃんとつくってあるので何度もステージが見えないほど客が登り、踊り狂い、ダイビング続出、客席(広場)のほうもみんなで手をつないで踊ったり名物らしいジェンカが自然発生したり、血を出して倒れるものまで見かけたが、ケンカはなく、人と目が合うとみんな微笑みあっていた。「花」も演奏されたが、まさに喜納昌吉のライブを思い出した。

それから渚ようこという真っ赤な衣装の歌手が登場。おじぎが長いので演歌歌手かと思いきや、ゴーゴー(っていうのか)風のナンバーで盛り上げる。2曲目からはバックダンサーも登場し、「ブーガルー」だとか「サイケで行こう」だとかいう歌詞の歌を何曲か披露。カラオケなのが残念。最初はあっけにとられていた観客も最後はノリノリになってしまった。年末3daysにはぜひゲスト出演してほしいものである。

さてさて、これだけ客席が盛り上がった状態で出てきたモノノケである。メンバー7人に加えおなじみフィドルの光介さん、チンドンの小暮美和さん、ビビンパの春日博文さんに卞仁子さん。どんなさわぎになるのかと期待したのだが、なんとモニターの調子が悪い!!モニターのかえり音にうるさい中川がたちまち不機嫌に。そして曲がすすむと、モニターのせいではなく三線のピックアップのコードが接触不良だということがわかった。さっきから「なかがわー」とずっと叫んでいた客が野次りはじめ、中川も「うるさいなあ。何やってるか見たらわかるやろ。早よせえとかそういうボキャブラリーしかないんか」などとやや険悪な雰囲気に。ぼくは全く知らないのだが、ハードコア時代ならさぞこわかっただろうと思える客と中川の関係である。

しかしさすがにバンドもいまや大人。不満ながらピックアップをやめてスタンドマイクで三線の音をひろい(「マイクは肩凝る」などとぶつぶつ)、「前の方、吠えてこわいね」とか「前の方のやつらうるさいから無視。おれは向こうの幅広いお客さんに語りかけてんねん」とかいっている間になんとかいつもらしい演奏になってきた。「きょう俺らは何をしにきたのか。それはCDを売りに来たのです!!買わな会場出られへんからね」などという最近聞き飽きた(・・・すいません)ギャグを飛ばし、最後の「さよなら港」で終わった。

アンコールがなかったあたり、やっぱり出来が不満だったのだろうか。悪く言うと前の「寿」(と渚ようこ)にくわれてしまった感さえあったが、何より三線マイクの不調が原因か。ミキサーの人にもバンド側にも不可抗力であり、なんとも残念だ。後で、「きょうは若い客が多すぎておっちゃん達がひいてしまった」と中川がいっていた、といううわさを聞いたのだが、ぼくがみた限りではそうでもなかった。おっちゃんらも充分楽しんでましたよ。

1997.8.19 中山貴弘

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