97.12.15, 28 Power Station & Coke Step 97.12.15, 28 年末ソウルフラワー祭

奥野と河村の漫才でオープニング。。。どうも全ツアー5日間すべて同じネタだったみたいだ。ちょっと寒い(笑)。けど、だいぶ練習したのだろうな。

パワステ最終日(12.15)は、ゲストが東京ビビンパクラブ。夏の寿町でも踊れるライブを見せてもらった。春日博文さんのギターはストラトをアンプに突っ込んだだけのものだが音色が実に多彩。「うまい」ギターというのはこういうものか。
ボーカル卞仁子(ピョン・インジャ)さんのチャンゴの鋭いこと。春日さんのケンガリとの掛け合いにはだれもが血が騒いでしまうだろう。仁子さんは観客が若いのでうれしそう。しかし夏の寿町のパワフルなおっちゃんらに比べると客はちょっと元気がない気もした。

そして、ドラマーが決まらないとか、はては解散するとかしないとか、さんざん気をもんだソウル・フラワー・ユニオンが、5月以来本当に待ちに待った登場。いつも通りのSE、アルバート・アイラーの「ゴースト」ですでにぼくは血管切れ状態に。そして、これは体に悪そう(笑)一曲目から「こたつ内紛争」。会場も大方ぶっちぎれ状態だ(特に大阪の客は暴れ方が激しかった)が、続く「月が笑う夜に〜」でクールダウンというなかなか大人なプログラム。

初参加のメンツは、ドラムが永原元(平安隆のバンドのメンバーだそう)、通称「元ちゃん」。パーカッションが中川のソロプロジェクトでドラムを叩いているサム・ベネット。フィドル、岸倫子。

「中川絶好調」の印象を強く受けた。ソロ活動での自信があらわれたものではないだろうか。おどけたしぐさも、「おんぼろの夜明け」で踊ってみせたりしても、客席にこびたものでは全くない。そして、半年の苦労の末、運転免許を取得したとか(ごくろうさま)。「おれはカーブは苦手や」「おれが走るときは全ての車を止めるように」。うーん、なんかわからないが、とにかく絶好調でこわいぞ。

紹介された新曲(アルバム未収録曲)は、まず5月にも披露された「ロンドンデリー」。大熊の参加する A-Musik の持ち歌でもある。来年いよいよCD-ROMが発売されるそう。この歌の由来が知りたいのだが、まだよくわからない。前は「68年頃パリで流行った曲」と紹介していたが、今回は「フレンチポップ」だといっていた。
「History (He story) があり Her story があるなら Ghostory もあってもよいのではないか」というよくわからないMCで(笑)紹介された「ゴーストーリー」。歌詞に寺山修司の影響が感じられる。曲調はジャズ歌謡調。
ドーナル・ラニーとの共演曲「潮の道」。洋子のチンドン、ヒデ坊のチャンゴの他に、中川が三線を弾き、ギターなしの演奏になった。この曲と、同じセットで続いて演奏された「満月の夕」でより優しく、しかし強くなった中川のうたごえを確認した。
「海行かば」とちょっと似た「ホライズン・マーチ」。NHKの「みんなのうた」でかかってもよさそうな曲(え、無茶?)で、親しみやすい、わかりやすい曲が多くなったと思う。

知らない曲はどうしても客のノリが悪く、東京では新曲が少しだれ気味だったのだが、大阪ではおなじみの盛り上がる曲にはさんで新曲を聞かせたり、今回のツアーは、構成がよくできている。不満をいうと全日程だいたい同じ曲目だったらしいこと。ドラマーが初参加なのでいたしかたないところか。

アンコールが2回あり、元ちゃんとサムによる重いリズムに、洋子の和太鼓が冴える「もののけと遊ぶ庭」、そして最後は毎度おなじみ「外交不能性」。たまには違う曲もっていう気もするけど、これで年も越せるってもんですよね、みなさん?

MCによると、今回のツアーのためにリハが10日間。全日、練習後飲みに行ったのだそう。とてもいい感じで、「ひょっとしたらいけるかも知れん」と中川がうれしそうにいう。そしてこれは大阪で「"あー、ソウル・フラワー・ユニオンってニューエストとメスカリンが合体して民謡やってるバンドやろ?"、いう状態から抜け出して『ソウル・フラワー・ユニオン』になった」とMCがあった。まさにその通りだと思った。中川「来年は全国ツアーをする!」。ニューアルバムのレコーディングにもかかるだろうし、いまから来年の活動が待ち遠しい。

コークステップ最終日(12.28)のゲスト「ほろほろ鳥」は、「ほろほろ鳥」と書いた赤提灯をマイクスタンドにとりつけ、ボーカリストとキーボード奏者のみ、朗読ともMCともつかない語りとうたが切れ目なく続く不思議な世界。メンバーの要請により、客席から飛び入りでフィドルのおっちゃんが登場。「エレクトロ・アジール・バップ」などにも参加している太田惠資(けいすけ)さんだった。
「音合わせ」といって壮士演歌を一曲披露した後、まことにスリリングで音楽的な、ライブならではの演奏を聞かせてくれた。「音師」だと思った。本当に飛び入りだったのかどうか知らないけど、うれしいハプニングで得した気分だった。


まさかと思っていたのだが、太郎は本当にやめてしまったらしい。だが、コークステップ最終日にソウルフラワー歴代ドラマーのベン、マー坊、太郎、元ちゃんが楽屋で記念撮影をしたとか。中川が「こんどの魂花時報の表紙やなと思てる」というので「マジ?」という声が客席からあがるが、どうも本当だったんだろうな。やめるからといってこれからもいろんな形でつきあいは続いていくのだろうか。

そして、東京ではどうも影が薄かった洋子だが、大阪では曲目も増え、中盤は「洋子タイム」みたいな感じ、「霧の雫」「ひぐらし」「テル・ママ」などおなじみの名曲をじっくり聴くことができた。最後の「もののけと遊ぶ庭」での和太鼓はすごく存在感あった。
このライブの直前にソウルフラワー・オフィスの方から「洋子は来年ソウル・フラワー・ユニオンのパーマネントメンバーではなくなる」という通知をもらっていて、東京のライブでの影の薄さが「やはり脱退をにおわせるものだったのか」とちょっと不満に思っていたのだが、大阪のライブで洋子の魅力を再確認した。そしてソウル・フラワー・ユニオンのきずなの強さのようなものも。

23日神戸市役所前、モノノケにはひさしぶりに参加した洋子がすごくさばさばしていたのが印象的だった。そして太郎もモノノケでこれからも姿を見ることができるだろうか。太郎さん、洋子さん、それぞれの道での今後の活躍に期待します。

1997.12.31 中山貴弘

魂花レビュー