Mononoke Kasetsu 3 days 98.1.17 鷹取教会&神戸市役所前*

「仮設3days」最終日はまず長田の鷹取教会「ペーパードーム」で、FMわいわいの開局2周年記念式典。FMラジオでの生中継ありというライブ。11時すぎにおーまき・ちまき&のむら・あきによるわいわいのテーマソングが演奏され、続いて教会内部に並べられたアジア各国の料理をつまみに乾杯。各種民族芸能が披露された後12時半からモノノケの出演。

ところが一旦出てきたメンバーが引っ込んでしまい、趙博さんが2曲ほど前座演奏をした。遅れて出てきたモノノケ、なんと中川の三線が行方不明らしい。急遽歌詞カードにコード進行を書き入れ、趙さんのギターを弾く中川。すごいしまらない。本人も「フォーク歌手みたいやね。人前でアコースティックギター弾くのははじめてかもしれん」と照れ気味。緊張して、MCもやりにくいとか。

しかし楽器のせいかサウンドがいつもより優しく、新鮮な演奏になった。何度もいうけど、本当に最近中川の声に優しさを感じる。そしてバンドは、その声にぴったりで急作りとは思えない密度の高い演奏を見せてくれた。

ステージ近くには「シルバーシート」が並べられ、演奏を楽しんでいるおばちゃんたち、おっちゃんたちが印象的だった。前に人が押し寄せ踊り狂う、ということが全くなくても、バンドのテンションは気分を高揚させるものだった。

途中、関係者のものだろうか、三線が届けられた。しかしピックアップがついていないので、結局演奏はギターで通した。

バンドとファンが移動して、次は市役所前。12月と違い、今回は新庁舎の真正面、建物に向かっての演奏。中川はさきほどの三線を持っている。そして、ロケーション的に燃えるせいか、先ほどあまりしゃべれなかったせいか、仮設の現状などについて厳しいコメントがあった。

特に「仮設はどうも意図的に老人を残しているとしか思えない」というのはショッキングだがまさしくその通りだろう。ぼくも、神戸市は老人が弱って死ぬのを待っているとしか思えない。そしてその仮設さえ今年の8月には解消するといっているが、本当に約束通り「強制撤去」でなく移住させてくれるのか、はなはだ疑問。
この集会に集まっている人達も、震災の記念日であらためて怒りがわき上がってきたという面持ちだった。

震災からちょうど3年。被災地の住民の間で「復興した(もう思い出したくない・いつまでも震災というな)」という人々と、取り残された人々の温度差は激しい。この期に及んでまだ空港をつくるという「市政」との温度差はもっと激しい。モノノケの出前ライブは当分減りそうにない。

1998.1.29 中山貴弘

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