98.10.04 Heiwa no shippo (At Osaka Castle) 98.10.04 平和のシッポ (大阪城野音)*

詩人、山之口獏の詩を高田渡や大工哲弘が歌う企画CDが今年発売された。 この催しは、そのライブ版とでもいうものである。(といって、まーちゃんとモノノケは関係ない。キーワードは「沖縄」ということだろうか)

まず「島の毛遊び人・まーちゃん」のバンドが登場。フェスタ in 湊川などで見たことがあるのだが、バンドがずいぶんしっかりしてきたように思う。「風になり、鳥になり」と歌うオープニング曲を含め数曲、コーラスのお姉さんが手話付きでうたうところは感動的だった。

次に「ふちがみとふなと」。ボーカルとピアニカその他鳴り物の渕上純子と、コントラバスの船戸博史(ソウルシャリスト・エスケイプに参加)が昔の流行歌やオリジナル曲を演奏する。
そして、高田渡が参加して渕上とデュエット。

佐渡山豊。オープニング、山之口獏のよく知られた詩がうたわれる(「お国はどこですか」と聞かれるやつ)。その後はオリジナル詩が中心だったと思うのだけど、どれもフォークロック調の暗い情念に満ち溢れた激しい曲ばかりで圧倒された。

続いて、大島保克。バックにシカラムータや大工哲弘のレコーディングなどでおなじみの、チューバ関島岳朗、サックス中尾勘二、きょう再登場のベースの船戸、そしてトロンボーン大原裕。
途中から高田渡もボーカルをとり、そのまま次の高田のステージへ。

高田渡といえばフォークの神様、、、というか仙人というか化石というか、、、みたいな人なのだけど、なんだかぼやき漫才みたいなMCとうたで会場を笑わせた。
「アンコールをやるのはわざとらしい」と最初からアンコール用の「生活の柄」を演奏。さらっと去っていった。
これに限らず、どの曲もさらっと終わってしまう。俳人のような人だとも思う。

第一部が終わると、沖縄の基地問題に関しての太田知事らのメッセージ披露と、新谷英子さんのスピーチ(すごい迫力)があった。

第二部はモノノケ。司会の趙博に「ほんまにだらだらした連中で」と紹介された通り、ぞろぞろと登場。ステージの上はメンバーに加え、大熊亘、こぐれみわ、趙博、ちんどん森本、たいこ白倉、トロンボーン大原裕。ヒデ坊がバンダナを頭に巻き、ケーキ屋のアルバイトみたいでかわいいが、よく見ると服は(ワンピースなのかな)インドの神様柄だったりもする。二本線の紺ジャージをはおり、なんだか予備校生風の河村は、アップライトではないエレキベース(フレットレス)を弾いている。

若い人を中心に、客がまばらにステージに詰め寄るが、中川「後ろの方あいてるからうしろで見て下さいね。別にそんな盛り上がるようなすごい演奏するわけでもないし」と観客の苦笑を誘う。そうして「美しき天然」からなんとなく演奏がはじまったのだが、なんとユニオンの新曲が演奏された。なんだかタイトルが英語らしく(あとでシャロン・シャノンのカバー「Each Little Thing」とわかる)、しかもリフレインの文句が「あいたくてあいたくて」だ。驚いた。モノノケで演奏されても違和感はなく、しゃりすけからの流れといえるだろうか。
そして、中川の「わたしたちは本来ソウル・フラワー・ユニオンっていうものすごい売れてるロックバンドなんやけどね」とかいうようなMCにまた驚く。思わず「三万枚!」と声をかけそうになったが、それはさておき、そろそろモノノケは終わりのつもりなのだろうか。

ステージ上のメンバーはみな自信に満ちた感じ。ぼくは座ってみていたのだが、演奏が進むにつれぐいとひきこまれていたのに気づいた。終わりに近づいた頃、うしろの席で女性二人連れが「ものすごい迫力・・・」とため息をついていた。ほんとにそう思う。ニューアルバムの仕上がりが楽しみ。年末のツアーもこの調子でいってほしい。自然に客が前へ押し寄せ、踊り、盛り上がったところで最後はお決まりの「さよなら港」。アンコールが出たが、メンバーは一旦引っ込む。

司会の趙「まだ時間あるから最後はみんなで」といったところで、ステージジャックが登場。休憩時間にビラを配っていた女性がギターを下げて、「みほです!!」と歌い始めた。
アンコールのために再登場しかけた中川が「おおっ」とのけぞり、また奥へ引っ込む。
宮崎出身というこの「みほ」さん、いい声なのだがちょっと曲が長く、みなが退屈しかけたところでスタッフが止めに入る。「あと一分だけ」と言う彼女はどこかへ連れて行かれ、高田渡をのぞく今日の出演者たちがステージに出てきた。中川「おれらと一緒に"豊年でーびる"やろうや」と声をかけていた。おれもそう思う。
中川、大島、まーちゃんが順にボーカルを取り、にぎやかなカチャーシーでコンサートは終了した。

1998.10.31 中山貴弘

魂花レビュー