Union at Shibuya On Air East by Kame 98.12.16 渋谷 ON AIR EAST

年末の渋谷はつらい。忘年会だかクリスマス会だかの若者の群れが歩道を埋め尽くし、ライブ会場に向かう急いた身にはもどかしくてしかたがない。On Airは同じ渋谷のクアトロに比べると、ホテル街の中にあることを除けば、そのそっけない体育館のような造りがSFUのライブを楽しむのには合っている。6時半頃会場へ入ると結構余裕があって相変わらず床に座ってる人々なんかもいて、まあこんなもんかなという感じ。しかし時間を追うごとに人が増えていって開演直前にはほぼ満員状態。Eastはぎゅうぎゅう詰めで1000人くらい入るときいていたので800人ぐらいは入っているのではないか。すごい。まわりの人も「こんなに人気があるとは思わなかった」と口々にいっている。いったいどうしたんだ、と思っていたら7時5分をすこしまわったころ客電が落ちた。通常のSFUのライブは15〜20分くらい押して始まるので「どうしたんだ。やる気満々か。」と思っているうちにメンバーが登場し「雑種天国」が始まった。

このところのSFUはバンドとしての一体感が増している。去年の暮れや、今年の春のライブは、大熊や太田やサムが各楽曲でそれぞれ突出してゲストミュージシャンのような感じだったが、パワステさよならライブあたりから、大熊も太田も等しくバンドのメンバーのような感じになり、いい意味でバンドとしての統一感がでてきている。今回はそれがさらにブラッシュアップされ、シンプルになった演奏とともに中川のボーカルが観客にさらに届くようになっている。それがよくでていたのは4曲目にやったロンドンデリーでライブではお馴染みの曲だが、これ程「唄」が聞こえたのは今回が始めてだった。新生SFUのキーワードはもしかすると、シンプル!ロックンロール!か。特筆すべきは英ちゃんのギター。今回はチャンゴをたたいているのは2,3曲だけであとはギターを弾きまくっている。ドーナルがでてきた曲でもアコースティックギターを弾いてその音色で酔わせてくれた。それから、今回やたらに目立った河村も見逃せない。フロントに並んでいることもめずらしいが、そのベースプレイもいつになく激しい。元ちゃんとのリズム隊は完璧だ。平安隆のツアーで一皮むけたか。もちろん奥野のキーボードもいい音を出していた。

二曲目の「ブルーマンデーパレード」(宿酔いの歌だったのか)に続いてなんと次は「向い風」。洋子さんがいなくたってできるんだぞというところをみせようというのか。女性ボーカルはどこかで見たひとだと思っていたら元スパンクハッピーのハラミドリではないか。おぉ。相変わらずエキセントリックぶりを見せてくれるが、洋子さんのインパクトのある唄に慣れ親しんでいる身にとってはちょっと苦しい。しかし新生SFUはそんなことものともせずに突き進んでいく。「ロンドンデリー」、「平和に生きる権利」と続いたあとで、いよいよドーナルの登場だ。「Each Little Thing」はCDで聴くより激しい感じがし、次の「風の市」は逆に静かな感じがした。ドーナルが引っ込んで「闇夜の太陽」、「ホライズンマーチ」と続く。ホライズンは名曲だ。もうすでにここで観客は相当盛り上がっている。そこへ油を注ぐように奥野のピアノのイントロが始まる。なに、ここでもう「こたつ内紛争」かい。このあとどうなるんだ、と思うまもなく踊りの渦にのみこまれてしまう。曲が終わったあと、中川が「ビア ブレイク。あと10分したら戻ってくるから。」と去っていく。

On Airは入場のときドリンクは付いていないし(クアトロはおまけのドリンクとあとで買うドリンクに差が付いていてなんだか頭にくる)、自主的に買いに行くシステムなので好ましいが、いかんせん人が多すぎて後ろまでいけない。売っているのは缶ビールだから次回は持ち来んでやろうなんて思ったりしているが、休憩がなかなか終わらない。SFUもとうとう寄る年波には勝てず途中で休憩をしなければ最後までもたんのか。

結局15分経って中川が登場し、シャリスケの「落日エレジー」が始まる。今年の活動を見せるということであれば、こういう構成がよいのだろうが私個人としては後半の始めの三曲(「夜に感謝を」、「おんぼろの夜明け」)は要らなかった、もっとSFUとして別の曲を演ってほしかったと思う。次の「アラバマソング」のサムの唄は良かった。歌詞カードを見ながら歌っていたハラミドリのボーカルもこの曲でやっと本領発揮という感じだ。サムは二曲に参加し、再びドーナルが出て「潮の路」と「満月の夕」。まさにドーナルマジックとでもいうべきか、ジャンルを超えた素晴らしいインターナショナルミュージックというものを身をもって体験する。ドーナルがいなくなっていよいよバンドも観客もラストに向かってなだれ込む。「戦火のかなた」、そしてなんと英ちゃんが歌う「マウンテンバイクフロムヘブン」だ。残念ながらボーカルがよく聞こえなかったけど、シンプル、ロックンロールの新生SFUを再び感じた。それからあとは何も言うことなし。「宇宙フーテンスイング」「海ゆかば山ゆかば踊るかばね」「エエジャナイカ」みんな踊りまくりだ。あとはダイブがでればKemuriやギターウルフやブランキーにも負けないぞ。(Blitzではよろしく)しかし欲をいえばこの最後の数曲、そろそろ違う曲もききたいな。レプンカムイとかリベラリストとかもというのは贅沢な望みか。

アンコール一曲目はドーナルを伴って「あと一曲ドーナルとできるレパートリーがあります」という「忘れられた男」。そして最後は「アイヌプリ チャランケ〜」おぉ!と思ったらそれだけで、「もののけと遊ぶ庭」が始まった。 もはや体力は尽きた。新生SFUはますます加速しそうだ。3月のBlitzは心して行かねばなるまい。

(追記) 今回On Air Eastに足を運んだ人のほとんどは3月のBlitzにも行くことだろう。でもあと4〜5割増客を入れなければならない。どうすればよいか。妙案として、中川が有能な(ソウルフラワーをリスペクトしていればなおよい)若手アーティスト(音楽に限らず)と対談する企画を雑誌でやったらどうか。特定の音楽誌ではなくSPAあたりがおもしろいのではないか。客が来るで〜。

1998.12.29 かめ

魂花レビュー