Union at Coke Step 98.12.21 大阪コークステップホール

アルバート・アイラーの「ゴースト」が流れるとメンバーがぞろぞろ登場。 ステージの上は、河村がフロントに来て、中川、伊丹、コーラスのハラ・ミドリ(スパンク・ハッピー)。曲によりステージ左端にチンドンこぐれみわ。ドラムス永原元、そして奥野。フィドル太田恵資と大熊が左うしろに二人並んでいる。

このツアーのオープニング曲は「雑種天国」。初日2日の磔磔に行った人は誰もが驚いたに違いない。続いて「ブルー・マンデー・パレード」、「底なしの底」を思わせるイントロから始まった「向い風」(ハラ・ミドリとのデュエット)とアップテンポで飛ばす。
中盤、10分のビールタイム。これはない方がよかった。客席はぎゅうぎゅうなので、客がビールを飲む事はできないから。第二部は女性陣抜きの「マンズ・ワールド」タイムではじまる。「落日エレジー」などしゃりすけナンバーが演奏された。続いてヒデ坊の登場。アコースティックな「イーチ・リトル・シング」から、レコードよりずっとスローな感じの「風の市」、レゲエ風にアレンジされた「戦火のかなた」と続いていく。
本編最後は「海行かば」「エエジャナイカ」。 アンコールの2回目は最近いつもそのような気がするが、スタッフがもう客出しを始めようとしたところメンバーが登場しての、やはり「こたつ内紛争」。

洋子が抜けたということで必然的に期待が集まった初参加のハラ・ミドリさんは、ストレートロングヘアに、濃色の超ミニワンピース、とジェーン・バーキン風な女性。タンバリンを持ち歌うさまはユニオンの雰囲気にマッチしていたといえよう。特に「宇宙フーテンスイング」では奥野のキーボード、大熊のサックスとあいまってどことなくいかがわしい感じを醸し出してグーだった。しかし「向い風」ではボーカルが聞こえにくくて不満も残った。

それはモノノケでおなじみのチンドンこぐれみわさんにも言えるかもしれない。モノノケのときはあまり感じないのだが、ユニオンのステージには少し音が弱い気がした。思えば洋子はパワフルボーカル、パワフルチンドンの上にサム・べネットがいなくてもいいくらいかっこいいパーカスまで叩いていたのだった。そしてサム・べネットがいない分このライブは少しサウンド的に物足りなかった。

そのかわり、元ちゃんの進歩が著しい。ユニオンのライブに参加してから早一年、登場したときの自信あふれる顔つきからして最初の頃とは違っていた。曲の合間に中川が三線で演歌みたいのをぺんぺんと弾き出すと、河村と元ちゃんが音をあわせていたが、三線の音色とすごくあっていて、そんな時にちらっと光るものが見えた気がした。音楽的なドラムを叩ける人だと思うので、今後テクニックより音色重視の演奏を期待する。

そしてヒデ坊が大活躍。グレッチの白いセミアコとギルドのエレアコ、どちらも新品ぴかぴかみたいなギターを曲ごとに持ちかえる。中川のギターとのバランス上いつもよりずっとONに聞こえた。そしてそしてなんと、「マウンテンバイク・フロム・ヘブン」ではハラ・ミドリと共にリードボーカルをとった。客席の女の子たちが熱狂して合唱したため、ほとんど聞こえなかったのだけれど。最後のフレーズを歌い終わると照れてぺろっと舌を出したのが印象的だった。

しかし何より目が釘付けになったのは後列一番左端の太田さんである。どの曲もコーラスになると大熊と二人並んで目をつぶりながら歌う。大熊は左の耳を押さえながら、太田は右手の振りつきで、その対照がとても可笑しい。さらに「マウンテンバイク」ではなぜかピンクのタオルを振り回しながらのコーラス、「戦火のかなた」では大熊のソロの間中メガホンで何やら叫んでいた。フィドルソロのかわりに得意のスキャット披露というのもあった。おもろすぎる。おっちゃんに負けずにがんばってくれよ、中川。

1998.12.22 中山貴弘

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