99.01.17 Mononoke in Nafsha and JR Shin-Nagata 99.01.17 NafshaとJR新長田*

震災から4周年になった。ナフシャの方は「新開地復活祭」。空き地が会場。空を見上げるとビルとビルの間にロープをはって「ガッツ君」などたくさんのTシャツを吊るしてある。その間口のせまいスペースにかなりの人がつめかけたが、客席のど真ん中にたき火がしてあって、少し危ない感じがした。モノノケにしては結構高いステージが、ちょっと遠く感じる。

おなじみの釜ヶ崎のおっちゃんが登場。ステージの上で下で踊り今日も元気だ。しかし新手のダンサーが登場した。「がんばろう」が終わった後、「神戸のみなさんのこぶしが上がらなかった!もう一度やって下さい!」と主張するおやじが出現。ヒデ坊「わたし達はこぶし上げてたんですけどね」。中川「みんな好きな曲で好きなように踊って下さい」と構わず次の曲へ。でもこのヒゲ面の熊おやじはひるまず前へ進み、実に楽しそうに何やら踊りはじめた。「インターナショナル」では釜ヶ崎のおっちゃんとそれぞれステージ両端に上がっての熱演。そして二人とも最後のキメのところで飛び降りた。「インター」でダイビング。これがモノノケの真髄である(違うか)。

あまり時間はないはずだが強いアンコールにこたえて「豊年でーびる」が演奏された。なんとも楽しいライブだった。ナフシャの隣のパン屋「街のイスキヤ」で天然酵母パンを買い、「介助犬シンちゃん」のポストカードなど眺めてから、次の会場へ。

JR新長田駅前は、FMわぃわぃの中継らしい。モノノケの前は女性演歌歌手が河内音頭や「珍島物語」などを熱唱していた。しかしこの会場、ステージがない。ただの駅前広場。奥野を見かけたので「どこでやるんですか?」と尋ねたら、「・・・ここやろな・・・」とのこと。実際、この単なる広場にマイクスタンドやら立てて準備を始めた。中川がなにやらしきりに気にしていて、ちょっと客席の方に出て振り返り、「ステージ」の見え方を確かめていた。

さて始まってみると、最初はやや遠巻きに見ていた客も、だんだんいい感じになってきた。「満月の夕」の終わりの方で突然PAがダウンするが客席が合唱をはじめ、曲の終わりまでそのまま盛り上げた。中川「いまの、貴重音源やで」と上機嫌。ぼくも一緒に歌いながらなんだか感動していた。

次第に客席とバンドとの距離が物理的にも心理的にも近づいてきた。最後はほとんど客もバンドも境界がないような状態で「さよなら港」。ファンがお決まりの紙テープを投げ込むが、その時の中川の本当にうれしそうな笑顔は最近好調のモノノケライブの中でも一番だったんじゃないだろうか。

ライブは予定通り6時前に終了。同じ広場では震災慰霊のろうそく点火が始まった。同じ日、テレビに出ていた兵庫県知事は「不況の影響でこの一年、復興は足踏み状態だった」と述べる。家を失った被災者の失業率が3割だか4割だかいう厳しい話も聞いている。せめてこうしたライブで次へのやる気を取り戻すことができるだろうか?ヒゲのおやじが言っていた「神戸のみなさんのこぶしが上がらなかった」ってそういう意味かもな、とも思う。

1999.02.02. 中山貴弘

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