Union at Heat Beat 99.3.23 梅田ヒート・ビート

「アイアイサーッ!!」と中川の一喝で始まった、オープニング曲は「リベラリスト」。ステージ上はフロント左から河村、中川、ヒデ坊、バック左から太田、大熊、元ちゃん、奥野。この曲は途中で洋子のボーカルパートがあって、そこが好きだった。その部分をひょっとしてヒデ坊が歌うのかと期待したが、意外にも新曲「イデアのアンブレラ」へつなげて演奏された。ちょっと肩すかしを食った気分でもあったが、それも悪くはない。洋子とのツインボーカル曲―それがぼくにとってソウル・フラワー・ユニオン最大の魅力でもあった―を捨てないで、色々なアレンジでこれからも聞かせてくれるだろうか。

新生SFUとしては二度目のツアーということになるが、「メンバーは四人」の意気込みの感じられる編成だ。時折太田の色が濃くですぎる部分があるのを除けば、かなりコアなライブになっている。ヒデ坊のところにドーナル・ラニーからFAXがやってきて、「おれがいなくてもステージは大丈夫か……SFUは演奏はともかくルックス的におれがいないと寂しいだろう」と心配していたそうである。ま、ドーナルはともかく、原ミドリ、こぐれみわと派手な女性二人が参加していた前回のツアーと比べると、やや華に欠ける感もなくはない。 その分、河村の活躍ぶりがめざましい。ステージ左奥で渋く弾いていた頃と比べると、ずいぶんはつらつとして見える。ベースプレイそのものは逆に以前ほど弾きまくる感じではなくなって、その点も成功していると思う。

そしてヒデ坊。このごろギターのバランスがずいぶん大きい。何よりびっくりしたのは「エレクトロ・アジール・バップ」からのレパートリーでチンドンをやったこと。世知辛い世の中を反映して「経費削減のため」の措置だそうだが、しっかりしたものだった(ただチンドンとおはやしの両方というのは無理があったかもしれない)。また前回同様「マウンテンバイク」でリードボーカルをとる。正直いってうまくはない。でも楽しそうだ。ステージ上のメンバー達も、この曲の間奏では河村、大熊、中川が並んでロケンロールなアクションを披露し、その後ろで太田がなぜかピンクのタオルを二本振り回して踊っていたりして、なんだかよくわからないが悪ノリ気味だ。

インターミッションには大熊と奥野だけが残って、トーク&演奏。大熊が「ソウルフラワーおとぼけサミットです」とMCしたときには帰りたくなったが、カクテルバーにぴったりの大人な演奏はよかった。クレズマー風の曲が始まると徐々にメンバーが戻ってきて、アルバート・アイラーのメドレー。そして「ラ・マルセイエーズ」風のメロディーが出てくるところで中川が登場。ギターを持たずに声楽家風に前で手を組んで、そのメロディーをコミカルに熱唱した。退役軍人の妨害に会いながらフランス国歌をアカペラで歌ったというゲンズブールを思い出して感動した。 これまでこんなに自由気ままな雰囲気のSFUを見たことがなかった。ヒデ坊のチンドンやボーカルもそうだが、こうした面は「ゆるい」。しかしそれが馴れ合いではなくて、かえって新鮮に、客もメンバーも一緒に楽しめるものになっていた。

一度目のアンコールのしめは「ホライズン・マーチ」。終わると、なんと「こういうことも一回やってみたかった」とステージに一同並び、手をつないでバンザイした。アリスかっつうの。客はおさまらず、二度目のアンコール「もののけと遊ぶ庭」。これが終わっても中川は次のライブ予定をぺらぺらしゃべり続け、何やら帰りたくなさそうな気配だ。他のメンバーがすっかりひきあげ態勢に入ったところで、三線をとりだして「アリラン」を歌いだした。バンドも即興かリハしていたのか、演奏をつける。「おいおい」というような表情をしていたヒデ坊が、楽器を持たずにおはやしでこれに参加した。曲が終わると客もすっかり満足して、早々に引きあげたのだった。

1999.4.11 中山貴弘

魂花レビュー