Union at Heat Beat 99.5.9 大阪城野音 Sweet love shower '99

こうした野外イベントでユニオンを見るのは初めてだ。しかも他のバンド目当てのファンが多かった。出演バンドは順に SMILE、WINO、オータムストーン、くるり、POLY SICS、ソウル・フラワー・ユニオン、トライセラトップス。 くるり以外のバンドとはファンが一切重なっていないように思う。その中でユニオンがどういう演奏を聞かせるかがポイントだったと言える。

ソウルフラワー以外でぼくの目当てはくるり。サイケとダブの匂いのする、わりとスローな曲が中心なのが、他のバンドと比べて目立った。ドラムスが生演奏でダブの音を叩き出しているのがすごいなと思う。ベースもパワフル。あとは何より岸田のギタープレイ。切れている。久々に興奮した。シングル曲「東京」は泣かせる。ボーカルが聞き取りにくい部分があったのが少し残念だった。

続くPOLY SICSはオレンジのつなぎを着て四角いサングラスをかけた、テクノなバンド。食パンを客席に投げたり、フラフープで縄跳びしたり、客をわかせた。次のユニオンを食ってしまった感があった。

ユニオンの出番になると、ぼくは椅子席の間を通って前の方に詰めた。案の定と言うべきか、椅子席前方はトライセラのファンとおぼしき女の子が大半を占めている。で、その子たちの反応を楽しみにしつつステージを見た。

この日登場したバンドはどれもロックバンドらしいロックバンドで、変わり種はPOLY SICSだけだった。しかし、実はこれに負けず奇妙なバンドがソウル・フラワー・ユニオンだったと言えるかもしれない。派手な服を着たチンドンの女性が「よいさーよいさー」とお囃子をしてるわ、ゲゲゲの鬼太郎みたいな男が三味線出してくるわ、ファンはカチャーシー踊ってるわ、ファン以外の客は結構とまどっているように見えた。というか、ちょっとバカにしていた気もする。冷静に考えてこれはオレンジのつなぎとかフラフープと比べても充分奇妙だが、ぼくらいっつもフツーにこれを聴いてるんだなあと妙な感慨があった。

しかし「満月の夕」に思わず動かされそうになっているらしき子もいた。不意打ちだったろうと思う。ぼくのひいき目もあるだろうけど、歌の力という点ではこのダントツ一番のバンドには違いない。こういう他流試合にもそれなりの意味はあったのだと思う。

曲目は「エエジャナイカ」「ロンドンデリー」「風の市」「満月の夕」「平和に生きる権利」「ブルーマンデーパレード」「海行かば山行かば踊るかばね」とほぼベスト選曲。あと「宇宙フーテン」をやってほしかったところ。 多分イベントということで、アップテンポのナンバーを集めたのだろう。演奏を一瞬止めてガーンと再開するようなギミック的なこともやっていた。

中川は始めての客をかなり意識していたのではないだろうか。動きがややぎこちなく、ときどき歌詞を間違えたりしている。ギターを普段より弾きまくる感じがした。その姿を見ながら考えたのだが、いつものライブではソウルフラワーのファンばかりが集まって、バンドはファンを相手に演奏し、ファンもファン同士連帯感みたいなものに浸っている(そうでない人もいるけど)。他流試合といえばモノノケは最たるものだったはずだが、最近はバンドもすっかり板につき、ユニオンのファンでない見物客にもおなじみになって、心待ちにされているようなところがある。そういう一種馴れ合いに陥りやすい状況から、一歩引いてみるのもまた新しい発見があっていいなと思った。願わくば野音に集まった中から、アイドルバンドに飽き足らない人達の心をつかんだことを。

ユニオンが終わると、トライセラのファンがどっと押し寄せてきた。ちょっと、というか圧倒的に数で負けているのがくやしいところだった。

追記。出演バンドの平均年齢は20代前半くらいだろうか。みなフツーの兄ちゃんみたいな服装で、ほっぺの赤いのが印象的だった。比べるとソウル・フラワー・ユニオンは結構芸能人ぽい。これも時代か。

1999.5.12 中山貴弘

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