武庫の郷 モノノケ 99.5.16 こうべ甲南 武庫の郷*

ぼくがJR六甲道より南をあるくことは滅多になく、前にこの附近を歩いたのは奇しくも震災の直後だった。各鉄道が分断され、確か阪神を使わなければならなかったのだ。 阪急からJRまで歩いても、震災のあったことなど今ではほとんどわからないくらいなのだが、JRから南へ坂を下っていくと明らかに95年以降に建ったと思われる、それも急づくりな建物がいくつも目に入った。 このあたりの商店街がほとんど全滅の被害を受けている様子を、長田と比べながら歩いたことを思い出した。

今回のライブは、数週間にわたって毎週末行われる被災障害者支援「ゆめ・風基金」関連のイベントで、この週は他に永六輔の講演会などがあった。 会場は「武庫の郷」前の広場だが、この施設にはレストランの他に奈良漬博物館があり、各種日本酒をそろえていたり、さらに靴の販売もしていた。神戸の地場産業復興のために建てられたものなのだと思う。

モノノケは予定通り4時頃登場。フロント左からヒデ坊、中川、チンドンの森本とこぐれ、バック左から奥野、河村、大熊、司会の趙博というメンバーで、「美しき天然」ではなく「カチューシャの唄」から始まり「アリラン」へと続いた。 途中ベースの弦が切れ、河村抜きで「竹田の子守唄」を演奏するアクシデントがあったが、5時までたっぷり1時間、楽しいライブとなった。(ところで、物販の長机に「アジールチルドレン」なるものを売っていたのがやや気になった)

ライブが終わって今度は阪神からJR、阪急と急な坂を登って帰った。 聞いた話では、産業の復興は震災後一旦進んだもののまた落ち込み気味だという。不況の影響もあるだろうが、震災体験がほとんど風化しかけている状況にあって、なんともやりきれなさを感じる。 こうしたイベントがきっかけであっても被災地に足を運ぶことは無駄ではないと思うので、機会があればどうか訪れてみてほしい。

1999.5.19 中山貴弘

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