99.8.5 心斎橋 BIG CAT 99.08.05 心斎橋 BIG CAT

盛りだくさんのライブだった。
阪神が一転低迷中にも関わらず、「新ダイナマイト打線ツアー」というツアー名通りの絶好調の出だし。特に中川のテンションはかなり高く、いつになくギターを弾きまくりアクションも派手だ。
洋子ボーカルだった曲、特にメスカリンのレパートリーを多数演奏。
「満月の夕」で平安隆がゲスト出演し、中川とデュエット。平安はアンコール「潮の路」でも三線で参加。
新曲を多数披露。毎回違った面を見せる元ちゃんの、この日はラフで楽しそうなドラミングとあいまって、バンドブーム期のバンドを思わせた。
ヒデ坊はリードボーカルにコーラス(特に「戦火のかなた」のハーモニー)にギターにチンドン、チャンゴと大活躍。
今度CDが一挙再発される(中川がライナーを書いている巻がある)じゃがたらの「もうがまんできない」をカバー、「闇夜の太陽」とメドレーで演奏。
おなじみの奥野&大熊タイムでは、マルクス兄弟を意識したかと思われる音楽ギャグ(奥野が鍵盤をスケールで登っていき、そのままキーボードのふちまで叩いてしまう)を演じる。また大熊のサントラ「豚の報い」からの曲が演奏される。

ほんとうに盛りだくさんだが、気になるところがいくつかあった。
まずは洋子のボーカルだったレパートリー。「霧の雫」「寝首かかれた酋長」「ひぐらし」以上が中川ボーカル、そしてヒデ坊が「龍宮へようこそ」「マウンテンバイク・フロム・ヘヴン」(これは最近おなじみだが)を歌った。「龍宮」では中川が英語ラップ。
こうなると嫌でも洋子のボーカルを思い出して比べてしまう。「寝首かかれた酋長」をやった時点で、そのうち「ひぐらし」もやるかな、と思っていたら同じ日に演奏されてしまって驚いたのだが、洋子ボーカルだった曲をこれだけ沢山一度に見せられると洋子の不在を「穴」と感じざるを得ない。ヒデ坊作曲の旧作はこれからもどんどんとりあげてほしいが、見せ方をもう少し考えるべきではないか。

そして、ライブの流れがいつになく悪い。
「満月の夕」はやや大げさなシンセのアレンジのせいもあるが、ライブの流れを止めてしまった。平安氏はほんとにいい声で感動的だが、シンセとあわせてこうした情緒性はこの日のライブにあっていなかったと思う。「満月の夕」をどうしても演奏しないといけなかったかどうかも疑問。
特に流れが悪いと思ったのはアンコールで、最後の「外交不能性」の前に一度ひっこんだのは、「アンコール2回」の体裁を作るためだけにしか見えない。1度目のアンコールのあと開演前のBGMが流れたので、帰りかけてしまった人もいた。ホール側の事情もあるのかもしれないが、いっそ「アンコール」などなしで押しとおしてもよかったのではないか。

ライブ中、ユニオンのライブ盤発表が予告された。中川「大人のみなさんはどういう意味かわかるよね」。キューンとの契約更新を指しているのであろうが、ぼくはこれを聞いて一挙に暗くなってしまいその後の演奏があまり楽しめなかった。
ほんの数日前、韓国・釜山でのライブに初の日本語ロックバンドとして参加、6万人の聴衆に外タレ扱いされる(ヒデ坊「わたしが "95年に震災があって・・・" とかゆっても何ゆっても "うぉー" って叫ぶんやんか」)というユニオンらしからぬ(?)出来事があったばかり。らしくないといえば、最近福岡でのスピッツ、エレカシとの共演を含むイベントに出ずっぱり。

いい曲をつくり真摯な活動をしているというだけでは食っていきにくいのが、市場経済というものであり残念ながら日本の音楽シーンの現状だ。ならば環境を変えて行こうというこれまで通りの努力と同時に、プロモーション方面も積極的に行い、次はどのレーベルと契約するにしても一度バーンとブレイクしてみせてほしいと、ぼくは思うのだ。

(1999.8.7作成. 99.8.9一部訂正) 中山貴弘

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