フレール須磨たかとり 99.10.30 フレール須磨たかとり*

たびたび私事になって恐縮だが、母にあたった復興住宅というのがこれである。そして「しんげんち」からここへ引っ越した方もいらっしゃるようで、今回はそうした人が中心になって自治会の発足記念にモノノケを呼ぶことになったそうだ。

催しは、自治会の挨拶に続いておーまき・ちまき&のむら・あき、演歌歌手・絋呂しのぶが出演してのカラオケ大会、エイサー隊に続いてモノノケという順番だった。かなりの人がカラオケですでに盛り上がって踊っていた。これ、モノノケ効果かもしれない。団地の催しで踊ったりはあまりしなかったような気がするから。そして、ソウルフラワー以外でも盛り上がってるのはとてもいい雰囲気だと思った。

この日、大熊&こぐれみわさんは神戸にいながら別のライブがあって、モノノケはメンバー+チンドンさちよさんの5人だった。クラリネットがない分奥野がたいへんということで、気遣ってか中川がMCで「せっかく難しいことやってんねんから注目してください」と述べていた。

演奏が薄い分は観客とエイサー隊の盛り上がりでカバー、という感じで、全体として楽しいライブになった。団地のみなさん、かなり酒が入っていると見えて、最初っから踊りまくり、演奏するモノノケをバックに一番前で記念写真撮る人もいる(中川によるとはじめてだそうです)。よだれを垂らしたビーグル犬がいるので見ていると、飼い主のおやじが「ビール飲ませた」といいながら踊っていた。そういうことはやめましょう。
終了予定時間をだいぶ過ぎてから、主催者がバンドに「行けるとこまで行って下さい」と声をかけたそうで、中川「ここの人達はだいぶ問題がありますね」といいつつ結構うれしそうだった。
この辺りでのモノノケといえば「アリラン」のアンコールが必ず飛び出すが、今回は「アリラン」から久しぶりの「トラジ」へとメドレーになった。いつもながら、「トラジ」にはつい涙ぐんでしまった。

終わってから、母の部屋に行って晩ご飯を食べながら話を聞いた。「(カラオケ大会で)みんな芸達者やったから驚いた」とか。こういう催しがないと、ご近所のそうした面もなかなかわからないことだ。母が自治会の役員で祭りの手伝いをしていたので、長らくモノノケを見に通いながらこれまでなかなか分からなかった主催側の雰囲気を見ることができた。そしてなにより、ぼくが震災前に住んでいた辺りで自治会がうまく機能していないのを見ていただけに、震災がきっかけとはいえ住人が自主的に団地を運営しようと努力している状況を好ましく思う。モノノケの現時点での存在意義はこういうことなんじゃないだろうか。

1999.11.3 中山貴弘

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