1997.03.25 奥野真哉インタビュー

奥野さんのラジオ番組「ロッキン・アジール・ジャミング」の企画で、奥野さんとのプレゼント交換に「パン歴十年のわたしが焼いたパンあるいは伊丹のおいしい納豆一ヶ月分」で応募し見事当選、番組出演した溝口恵子さんについて行き、収録前の打ち合わせ時間にインタビューをさせていただきました。その際、ホームページに寄せられたファンからの質問や、メーリングリストでの議論もふまえて質問しました。

なお奥野さんはパンと納豆の両方がもらえると思って当選にしたそうです・・・打ち合わせの電話で「どちらか」といわれて「・・・じゃあ・・・パンでいいです」とあまりにがっかりしていたので、納豆も十個ほどつけることになりました。

インタビュー・構成: 中山貴弘 (97.03.26)


- えっと。まずは奥野さんの生い立ちから(笑)

二万字インタヴューみたいやね。

- 今までなかったですし。

これからもないやろねえ。

- きょうのプレゼント、パンと納豆ですが、納豆好きなんですか?

うん。子供のころは食べへんかってんけど、ニューエストのドラマーが納豆好きでね。ひとが食べてるとこ見てたらすごいうまそうに見えてね。あの「しゃかしゃかしゃか」(と納豆をかき混ぜる真似)ってのが。ちょうど「クロスブリードパーク」の頃やってんけど。

- 音楽の変化と好みの変化が重なった(笑)

納豆は心臓病にもええらしいねん。おばあちゃんも納豆食べてんねんけど、元気やで。

- モノノケとか見に来られますか?

いや。おばあちゃんが最後に見にきたのは中学の文化祭やからね。

- 文化祭で奥野さんのバンドを見た。

そうそう。チロル(注:キャロルのもじりだったらしい・・・)

- (笑)。こないだ番組でかかった奥野さんのサントラ、すごくよかったんですけど、そういうインストゥルメンタルじゃなくて歌詞のあるものを作曲していく気はないですか。

作詞作曲したら自分でうたうのがほんまやと思うねんけど、おれ、なんか人前で歌われへんねん。昔からヘタで、人前で歌うっていうことに抵抗あるねん。

- 学校の音楽のテストで暗い思い出がある、とか?

そうそう。そのときは笑いの方向に持っていったりとかして。こないだカラオケ行ってんけど、あかんかったわ。

- 何うたったんですか。

小沢健二。あいつの歌、難しいわ。ヘタやと思とってんけど(笑)難しい歌つくっとんやね。ちゃらららちゃららら(と一節披露)みたいな。カラオケでうたってみてはじめてあいつに Respect 感じたわ。

- (笑)でも小沢健二の歌詞とか曲はすごく好きなんでしょう?

うん。歌がうまいとかへたとかどうでもええ音楽ってあるねん。A-MUSIKって知ってる?竹田さんって歌うまないねんけど、音楽聴いたらものすごいええねん。伴奏つけるから、そこから外れるとかいうことが出てくるんでね。

- 伊丹さんみたいに、作詞作曲して自分は歌わない、って方向も考えられると思うんですけど、自分の曲をユニオンに提供する気はないですか。

ヒデちゃんの場合はヨーコちゃんていう完璧な理想の歌手がはじめからいたからねえ。おれの場合は最初は自分のバンドやってて、あとからニューエスト入って、やから。自分が書くことがあるとしたら、それは中川のつくってくるものが不満になったときやと思う。

- バンドがいろいろな方向に変わって来ましたが、それについていけないとか、自分は違う方向に行きたいとか、なかったですか。

違う方向に行きたいって時は、例えば前奏で自分の意見を出してみたりね。「偉大なる社会」って最初は「ひかりの怪物」とひっついててん。結局インストゥルメンタルとして独立させたけど。

- 沖縄やったりアイヌやったり、いまはコリア民謡やったりとか、ありますが。

それはね、だれも「そんなかっこ悪い方向行きたない」みたいな音楽を持ってくることはないねん。みんなもともと好きなものは違うけどね。やっぱり共有できるセンスがあるねん。

- 中川さんがMCなんかで政治的な発言をすることがありますが、あれはユニオンとしての発言なのか、中川さん個人の意見なのか、、、

「え、あいつあんなこと考えとったんか」ってびっくりするようなことはない。ミーティングとかで「みんなはどう思う?」いうてはなしあうからね。こないだの [魂花時報にのった]「自由主義史観」[への批判] とかでもね。

- ミーティングは多いですか。

うん。ものすごい多い。ミーティングだけで一人の人生になるくらいの話する。

- 音楽性も社会的な話も含めて。

そう。

- では次の質問行きます。奥野さんはメジャー指向ですか、インディー指向ですか。

完全にメジャー指向やね。インディー的な売り方にこだわりなんかないし、インディーっていう限られた世界だけじゃなくって、もっと広い世界で自分たちの音楽を多くの人のこころに響かせたい、それができる、と思ってるから。

- そしたら、TV出演、CMタイアップですね(笑)

なかなか見つかれへんねんけど。

- 音楽誌以外の雑誌とかにも、もっとのってほしいですね。そういえば前に「キューティー」読んでる、って放送でいってましたけど(笑)、他に読む雑誌ってありますか。

「an・an」とかは時々読む。

- えっ、それは本当なんですか。

うん。

- じゃあ「an・an」と「オリーブ」ではどちらが好きですか。

「an・an」やね。あれは「少年ジャンプ」って感じがする。「オリーブ」は・・・「ビッグ・コミック」かな。

- はあ。他に、例えば、もっと親しみやすいバンドの愛称をつけるとか、どうですか。エレファント・カシマシが「エレカシ」とかジュディ&マリーが「ジュディマリ」とか、人口に膾炙するようなやつ、あるでしょう。

敏いとうとハッピーアンドブルーが「トシハピ」とか。

- ・・・。「ソウル」「フラワー」「ユニオン」ってちょっと略しにくい。三つもあるから。

あれは「ソウルフラワー・ユニオン」やねん。だから略すとしたら「ユニオン」と「モノノケ」やね。

- 「ユニオン」だけじゃどのバンドかわからないです。「ソウフラ」っていってる人いるそうですけど。神戸のわりと年配の人なんか「ソウル」っていってるみたいですが、ソウルは音楽のジャンルだし。

なんか、ソウル音楽やと思われるかもね。おれらのCDの帯のとこ、なんて書いてるか知ってる?

- 「ロック?」です。

レコード会社の人も困ってね。

- え、あれは会社がつけた?

いや、会社は「ロック」って書いて、おれらが「?」つけた。

- (笑)

まあ、なんでも略すのっていややねん。そういう風潮って。むかしあだ名「オクシン」やったし。

- (笑)。シングルとかもわかりやすくてキャッチーなタイトルつけるとか。

ちょっと「えっ?」ってうような、「どんなんやろ? 内容を知りたい」って思わせるような名前にしたいっていう気はある。「ロック」とかいう大きな枠だけじゃなくて、その中でもっと引きつけるコピー考えられたらええんやけどね。「渋谷系最後の切り札」みたいな。

- ソウルフラワーって渋谷系でしたっけ。(注:筆者は東京の某CD店でソウルフラワーが「SHIBUYA RECOMMENDED CORNER」におかれているという話を聞いたことがある)

違うって。なんか、聞いたんやけど、学校のクラスでいくつかグループってできるやん。あれで、ちょっと変わった子の集まるグループにうけたらブレイクする、っていう法則あるらしいねん。

- ソウルフラワーってクラスでは結構変わった子の方に人気あるんじゃないですか。

そうかも知れへん・・・じゃあ、なんでやろね。

- グループが小さすぎるのかも知れませんね。二人だけ、とか。

(笑)。でも、そういうファンは捕まえておきたい。一度つかまえたファンは離さない、みたいなとこあるねん。ファンになってくれた人は引きつけておきたい。

- 離れていったファンもいるでしょう?

でも、ずっとついてきてくれたファンは大事にしたいと思っている。そこに、おれらのやりたいことばっかり押しつける気ってないねん・・・そろそろ時間やね。今の話、録っといたらよかったかな。

番組ディレクター中尾氏:では本番行きましょうか。

魂花レビュー | 奥野ほそ道