キム·トゥットル 김뜻돌 Meaningful Stoneの録音物を年代逆順に聴く(1) 2022年


キム·トゥットルはYouTubeでの作品発表を経て、2019年に「韓国インディの新人の登竜門、テレビ局EBSが主催する〈ハロールーキー〉で最終5組に選出されたシンガーソングライター」(またホンデで会おう〜韓国インディ音楽通信〜第3回 Best Korean Indie Albums for The Second Half of 2020)。「トゥットル」というステージネームは彼女の本名を漢字で書いた「志珉」をハングルに直した「뜻(意味)돌(石)」だと説明されている([Super K-Pop] Meaningful Stone (김뜻돌)’ Full Episode on Arirang Radio!)。Meaningful Stoneはさらにその英訳であるが、バンド名っぽい。同じArirang Radioのインタビューで「自分の音楽にジャンルはないけど今はロックがやりたい」と言っていて、実際この頃から固定のバンドメンバーとライブや録音をしている。ぼく自身は、初期の彼女の音楽はカメレオンみたいだと思っていて、ヴァーサタイルな感じがすごく好きなんだけど、当面はロックモードなのかも知れない。

2022年の最新作はシングル3曲。実質EPと言ってよさそうだけど、3つに分けて発表している。順番に聴いてみましょう。

Kiddo (기도)

https://www.youtube.com/watch?v=iHQw5CMEJFQ
前作のEP “Cobalt” からの流れでオルタナ系ギターロック。シンプルなんだけど展開は盛りだくさんだし、メロディアスだしハーモニーボーカルが細かくつけてあって彼女らしい。Kiddoは漢字で「祈祷」とするとなんだかゴスメタルっぽいが「祈り」という意味。

Trash (일반쓰레기)

https://www.youtube.com/watch?v=mb_DbQxHhRA
わざとはすっぱなパティ・スミス風の歌いかた、タイトルとずっとんずっとんいうリズムはニューヨークドールズっぽいし、途中にラモーンズのごとくリズムとあまり合ってないカウントが入ってきたり、ニューヨーク・パンクへのオマージュなのかな。出だしをわざと間違えてやり直したりとか、ラフな感じを出しつつも、やはりコーラスは凝っている。最後の「ウーウィーウー」ってサイレンの音みたいなのがハモってるとことか、好き。タイトルは「一般ごみ」という意味。

김뜻돌 (Meaningful Stone) – Psychomania [MV]

https://www.youtube.com/watch?v=CyWFnj7Vrnk
公式発表曲で初めての全英語詞かと思う。最近ひとつ発見したことには、どうやら韓国の人の英詞にも日本同様、脚韻がほとんどない(この曲はコーラスだけ少しある)。全部英語で歌うSay Sue Meなんかでも意識してない気がする。ちょっと不思議な話ではある。

以上3曲、今年のキム・トゥットルはペンタポートロックフェスティバルその他いくつも野外フェスに出ているので(なんでもYouTubeで観られるのでありがたい時代だ)、フェスで盛り上がれる曲をまとめて発表したという感じだろうか。

最後にすごく好きなライブ映像を紹介する。

220508 김뜻돌 격조콘 1부

https://www.youtube.com/watch?v=UITs0oXo5LU
男性シンガーと共演。この公園みたいな場所で、色んな人がアコースティックなライブをやっている映像が、YouTubeに多数アップされている。森に見えるがどうも市街地に近いらしく、演奏者も客も全員ヘッドホンをしているそう(大瀧詠一のコンサートみたいだ。ツイッターで会場の写真を見かけた)。
アコギ弾き語りでもロック感ある演奏。1曲目の「夢からかかってきた電話」はどんなアレンジで演奏されても名曲だが、この弾き語りもとてもいい。

そういえば、この人はCDやアナログ盤も全部自主制作でやっていて、現在リアルメディアを買うのは超難しい。もともと韓国のインディー音楽はアルバムより配信、おそらくそれよりライブに主眼があるみたいだけど、どうにかならないものか。韓国で唯一(?)FLACが買えるBugsも今年から外国在住者が契約できなくなってしまったそうで、隣国なのにこんなに貿易障壁があるのはすごく謎だ。

参考リンク:
Bugs
https://music.bugs.co.kr/artist/20041324

クレジットとか歌詞とか詳しくわかるので、いつも参考にしている。URLはキム・トゥットルへのリンク。自動翻訳はGoogleよりPapagoがおすすめ。

(2022.11.20記)