キム·トゥットル 김뜻돌 Meaningful Stoneの録音物を年代逆順に聴く(2) 2021年


2021年のキム·トゥットルはEP “Cobalt” をリリース。韓国のインディーズは日本とはちょっと音楽事情が違うのか、アルバムはあんまり出さないようで、例えば人気バンドのSE SO NEONはEPを2枚出してるがアルバムはない(なのにボーカルのソユンはソロでフルアルバムを作ってたりするのが謎だ)。

EPを順に聴いて行こう。

김뜻돌- COBALT (Official video)

ジャケットのアートワーク同様、ガレージパンク風のPV。自己愛がテーマなのだろうか、性別不詳のもうひとりの登場人物が彼女のドッペルゲンガーのようだ。ギターがシューゲイザー風というのがトゥットルのイメージだが、ずっと一緒に活動してるギタリストのカン・ウォンウはこの辺でこういう音に変えたのかもしれない。前はもっとポップな印象だったので。

[안녕,낯선사람] Vol.01 김뜻돌 – 중요해(Most)

PVがなかったので、弾き語り映像を。歌詞は「私は私が一番重要」という内容。スタジオ録音でもアコギで始まる。この人、ギターは(全部じゃないかもしれないが)オープンGか何か変則チューニングにしてある()。このギター、17歳の時にお父さんが買ってくれて、それから作曲を始めたという泣かせるエピソードがある(インタビュービデオより)。

김뜻돌- 비 오는 거리에서 춤을 추자 (Official Video) “Dancing in the Rain”

「雨が降る通りで踊りを踊ろう」というタイトルがいい。韓国のレビューで「イントロがスマパンの”1979″そっくり」みたいなことが書いてあるのを見かけた。実際、スマパンのギターはかなりの発明なので、単純なコード進行では似てしまってもしょうがないかと。ビデオはトゥットルが疾走する姿もかっこいいし、バンドが固定メンバーになって、みんなでずぶ濡れで演奏してて、すごく楽しそうだなという印象。genieにメイキングの写真集があった(위태로운 청춘들에게, ‘김뜻돌’ [비 오는 거리에서 춤을 추자] MV 제작기)。メンバーはベース 이재 イジェ、ドラム 김나현 キムナヒョンが女性、そしてギターは 강원으 カン・ウォンウ。

短いインスト曲 Mangwon Street 비 오는 망원로 (「雨のマンウォン路」と日本語訳すると演歌っぽい)は省略して、ラストナンバー。

김뜻돌 – 훨훨 (Fly)

PVがないけど、これはスタジオ録音がすごくいいので、ライブ映像より音源のみでどうぞ。タイトルは「ふわりふわり」。アーシーなアコギ弾き語りの出だしから、ピアノやホーンズが加わるアレンジが非常に緻密で熱量がある。最後はボーカルの逆回転も出てくるサイケな曲。

この年のライブビデオでは、これが一番面白かった。

[2021 변신술] 김뜻돌 (Meaningful Stone) | Full Live Performance

「変身術」はライブのシリーズ名。韓国式の家屋でのライブなので「韓国の伝統」がテーマなのか、文字通りとってつけたようなチマをトゥットルが着ているのが演奏中にずれてきたり、ハードな演奏をするギタリストがヘンテコな帽子を被ってたり(そしてMCになるとすごい照れ屋)色々ほほえましい。外は雨が強く降っていて、すごく絵になるライブ映像だし、演奏の選曲はベスト曲集になっている。

そして年も押し迫ってから「石祭り」と題したワンマンライブ。意外だがこれが初の単独公演とのこと。ライブタイトルは韓国の1歳のお祝い「トルジャンチ」とトゥットルのトル(石)をかけたのだと思う。

211216 김뜻돌 – 돌을 던져줘요 (앵앵콜곡) @ 롤링홀 김뜻돌 첫 단독공연 돌잔치

本編フル映像もあるけど、アンコールのこの曲がラップ入りでかっこいいのであげておく。かっこいいといえば、イジェのゴリゴリのベースがまた超かっこいい。


ポジション移動が多いので何かのオープンチューニングと思ってたけど、この曲はDrop Dみたい。他にスタンダードチューニングで1,2弦をドローンとして使用していたり、弾き方が独創的だ。ていうか、最近はみんなこうなのか?

(2022.11.23記;2022.12.18注を追記)