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「私ってこんな」から「はだ絵」まで

次の文章は1999.02.12 に投稿していただきました。原文は80〜81年にかけて、ご自身のつくる中山ラビに関するミニコミ誌に掲載したもの。数年前にNIFTY 上にアップされたそうです。

私ってこんな

 何と言ってもデビューアルバムであり,僕とラビとの出会いもこのアルバム ということになる.アルバムの構成もラビの歌い方も,やや統一感に欠ける所 があるが,今となってはかえってそれが懐かしいような気もする.ラビの声も 今とは少し違うようだ.いくつかのうたでの歌い方は,金延幸子さんと共通す るものがあるかなと,割と最近思いついた.やはり同時代の歌い手ということ だろうか.もっと行くと,ジョニー・ミッチェルあたり・・・・やはりラビは フォーク・シンガー出身(?)なのだと思う.

 僕が最初に気に入った曲は,「バッタのように」「私が望むものは」「昔の 知恵は今滅びてゆく」「13円50銭」で,ここらの曲がラビのシンガー・ソング ライターとしての出発点になっているような気がする.「私ってこんな」(他 人の詩だけど)や「ちんちん電車」(「川に沿って」に通ずる曲だと思う)は シンプルな感じ.他の曲はいい所と良くないところが混じり合ってる感じで, いかにもデビュー・アルバムらしいと言うか。「片足ジャック」(これ曲はデ ィランでは?)や「エントツとけむり」(ラビ独特の重いリズムの曲のはしり ?)あたりも,僕は気に入っているのだが・・・・.

 ジャケットは,ラビのアルバムの中では平凡な方だけど,裏面の薄いポート レートには最初気付かなかった.

ラビ・ひらひら

 このアルバムが,ラビのアルバムの中でも強い印象を残しているのは,何と 言ってもジャケットによること大である.ラビのアルバムはどれもジャケット が印象的で,トータルなアルバム作りと言う点でも感心するんだけど,中でも このアルバムのジャケットはすごい.奥山民枝女史の手による表・裏とも全面 に描かれたラビのポートレートは“硬派の女”と言っていいのかどうか分から ないけど,すこぶる強烈.

 ジャケットのことが長くなったけど,中身の方もかなりのもの.今でもよく 歌う曲が多いし,次の「女です」と共に一つの頂点を築いたアルバムと言えよ う.ただ当時中途半端という評があったように,物足りなさもある.AB両面 とも盛り上がりそうでいてもう一歩の所で終わってしまう感じだし,とりわけ 僕が残念に思ったのは「こえられない」がまさに中途半端な形でしか入ってい ないことだった.これなら入れない方が良かったんじゃ・・・・.

ラビ/女です

 調べた訳ではないのだけれど,今までのラビのアルバムの中で1番売れたも のだと思う.当時,某音楽雑誌の人気投票の国内女性ボーカリスト部門で,4 ・5位にランクされる現象が起きた程で,1つのピークを築いたアルバムと言 えるだろう.

 内容の充実度も大したもので,トランザムのプロらしい密度の濃い演奏に乗 って歌い上げられている.アルバムの完成度は1・2だろう.切れの良いロッ クのリズム,逆にスローの「時にはランボーに」や「じっとしてな」もしっか りとしたバックだからこそで,とりわけ「じっとしてな」の”・・・・風船・ ・・・!”(注:歌詞の1部です,この後つばきが飛んでいる)の所は最高. このアルバムの中では異色の「その気になってるは」は,初めライブで聞いた ときはショックだったんだけど出来はいい.残念なのは“ぎょうざ屋”のパー トがカットされていること.通俗的な歌詞だけど,この歌の核になっている部 分だけに入れて欲しかった.

 全体に出来すぎていて不満に思う所もある.例えばB面の後半の3曲はステ ージではほとんどやらない曲で,内容はともかく余りにもレコードを意識し過 ぎている感じで,曲の出来具合に難があっても他に入れるものはあったのにと 言う気がする.

 ジャケットのデザインは,何やらわいせつ気な“花開く女”というイメージ で,内容にもマッチしている. 続く

@T.K.生 HGD03700@nifty.ne.jp

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