ティム・オブライエン「Songs from the Mountain」と映画「コールドマウンテン」


John Herrmann, Tim O’Brien, Dirk Powell – Songs from the Mountain (1999)
http://amzn.to/1otvnD0

歌とダンス音楽とがうまく配置されてて飽きず、かといって総花的な感じでもなく、硬派な(?)オールド・タイム音楽が聴けます。「ティム・オブライエンによる、ブルーグラスの前身としてのマウンテン・ミュージックのアルバム」という理解で買ったんですが、聴いてみて、ダンスチューンの構成なんかに(最近の)アイリッシュ・ミュージックからの影響もあるんじゃないかと感じました。

ティム・オブライエンは、これを作ってて、続く Crossing (1999) http://amzn.to/1V3fwJu (おすすめですがCD入手が難しい)を構想したのかも知れませんね。しかし、アルバム Crossing の持つ意味は、アメリカ音楽のルーツとしてのアイルランド音楽を探求したというより、共通の先祖を持つがそれぞれ特異に進化した二つの音楽を、アイルランド系アメリカ人のミュージシャンが橋渡しして、現在形の交流を行った、ということなんじゃないかなあと思っています(*)。本人の意図とは違うかも知れませんが。

という辺りの話は、よく知らずに首を突っ込まない方がいいので、映画の話に移りますが、どうもSongs from the Mountainは、「小説Cold Mountainにインスパイアされた」音楽なんだそうです。

(小説はもう在庫なしなのか…)

そうとは知らず、たまたま同時期に映画の「コールドマウンテン」(2003)を観ました。

近年、映画「オー!ブラザー」(2000)の影響でカントリー音楽が日本で再流行したらしいですが、「コールドマウンテン」はそのオールド・タイム版ということになっているようです。サントラのプロデューサーが同じ人(T・ボーン・バーネット)だって。

うーん。映画「コールドマウンテン」は名作とは思わないな。映画自体はいまどきなので、戦争シーン等なかなかにリアルな描き方だけど、音響と映像のあわせ方が適当だと思った。たとえば教会で合唱してる時に南北戦争がはじまって、男たちが次々立ち上がるシーン。合唱はフェードアウトで終わらないはずですよ。そういうのを「適当」と感じた。

もっと大事なのはこちらだが、オールド・タイムの曲が使われているといっても、田舎の雰囲気を出すためのBGMとしか感じられず、ストーリー展開に必須のものであるという必然性を感じなかったです。

というところで、監督(アンソニー・ミンゲラ)についてちょっと調べて、すぐ納得しました。「リプリー」でチェット・ベイカーを雑な味付けに使ってた監督ですね。もしかしたら監督のせいじゃなくて、両作の音楽担当の人(これも調べたら同じ人でした)のせいかも知れないけど、こちらもどうも音楽の使い方が気に入らず。

なんとなく小説Cold Mountainを読む気が失せてしまったが、いちおう読んでみるか…

* ぼくの中では、同じモンゴロイドでも、2万年前にベーリング海峡を渡ったアメリカ先住民と、南まわりで数千年前にハワイやイースター島に行きついたポリネシア人が、21世紀になって交流会を開いた、みたいなイメージ。