耳コピまたは音楽のプレイアロング練習ソフトのまとめ (2) Sonic Visualiser


前の記事に「耳コピなら再生スピード0.5」と書きましたが、ここでピッチの話をします。アナログテープを速度可変の装置で再生すると、スピードを落とした割合に応じて、ピッチ(音程)が下がります。

テープの再生スピードを操作して、テンポとキーの違うテイクをつなげちゃったのが「ストロベリーフィールズ・フォーエバー」というのは有名な話ですが、テープじゃなくても、45回転のアナログレコードを間違って33回転でかけてしまったことはないでしようか。沢田研二がラッツ&スターになりますよね。あれです。

アイリッシュフィドルの採譜本 “Bowing Styles in Irish Fiddle Playing“(著者サイトで無料公開)の前書きに「スピードを25%に落として聴くことにより、細かい装飾音や弓遣いまでわかるようになった」的なことが書いてあって、しばらくピンとこなかったんですが、わかった。速度を25%にすると、ちょうど2オクターブ下がるから、バイオリンのピッチをあわせるのが楽なんです。音色がコントラバスみたいになってしまうが。これが速度0.75とかにすると(音程はどれくらい下がるんかな。ややこしいので計算しません)採譜のたびにバイオリンのチューニングを下げないといけなくて、面倒きわまりなかったと思うんです。

音声ファイル(MP3など)を使って耳コピや演奏に合わせた練習をする場合、スピードを変更できるソフトは色々あります。愛用しているものに

Sonic Visualiser

という英国大学製のフリーソフトがあります(Mac, Win, Linux版あり)。綴りが”Visualizer”じゃないあたり、英国のかをりがしますよね。音楽の練習ソフトじゃなくて音声の解析をするソフトであり、本来の使い方は非常に難しいんだけど、再生する音声の範囲を指定して好きなスピードでリピート再生させることは割と簡単にできるので、重宝してます。スピードをだいぶ落としても、音がいいです。(参考記事:【藤本健のDigital Audio Laboratory】無料ソフトでオーディオ分析。「Sonic Visualiser」で何ができる?

残念なことにピッチの調整はできません。このソフトへの要望をあげるサイトに「リアルタイムピッチシフターがほしい」と書かれていたので、同じようなことを考える人は多いのでしょう。

なぜピッチを変えたいかというと、特に古い録音で、テープがおかしいかフィドラーのチューニングが440Hzじゃない(好みのピッチ?)ものがあること、また調が違う楽器を使っている場合などもあります。コンサーティーナのMary MacNamaraがマーティン・ヘイズと共演しているCDがあるんですが、曲によって半音高い(通常キーDの曲ならEbになる)。こういうのはピッチを変えられると便利ですよね。

ちなみに Aural Player というMac用の音楽プレーヤーでは、再生速度に連動したピッチシフト変更ができます(再生速度とピッチを別々に変更することも可能)。上記のような25%のスピードにしたらどんな感じの音が出てくるか、アナログ時代を体験するために使ってみても楽しいです。

次回はピッチを変えられるソフトについて書きます。

Mary Macnamara – Traditional music of East Clare
文中で触れた録音は、これ。収録曲の多くにMartin Hayesやそのお父さんのP. Joe Hayesがフィドルで参加しています。